第94話 小さな約束 その12 | 【小説】カフェ・シェリー

【小説】カフェ・シェリー

ここは喫茶店、カフェ・シェリー。
登場するのは40代の渋いマスターと20代の店員マイ、そして主人公はお客様であるあなた。
そこで体験する、魔法のコーヒー「シェリー・ブレンド」の味で、お客様は何かに気づき、そして希望を持っていく。
そんな喫茶店のお話です。


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「では、そのためには娘さんと奥さんと、どのような関係を築いておかないといけないでしょうね?」

 

 娘と妻との関係。そう問われて言葉に詰まってしまった。

 

 頭の中では理想の関係は描けている。笑顔でリビングで会話をしている。そんな感じだ。けれど実際にはそれとは程遠い。まず私が家にいない。娘や妻と会話をしていない。食事だって一緒にしていない。

 

「将来の理想とは程遠い生活をしていますね」

 

 ぼそりと口からそんな言葉が飛び出した。自分でもびっくりだ。けれどそれが本音であり、本当のことなのだから仕方ない。

 

「そもそものんびりと暮らせるような状況じゃない。仕事、仕事で常に追われている。そんな生活を送っているんですから。これがいい状況を生み出しているなんてことはないですよね。ハハハ…」

 

 なんだ、私が一生懸命働いているのは家族にとって何の意味もなかったのか。うすうすは頭のなかではわかっていたが、羽賀さんからこうやって質問されて、それに答えていくことでこのことが明確になっていった。

 

「谷川さん、私が感じたことをお伝えしてもよろしいですか?」

 

「えぇ、どうぞ」

 

 どうせ、羽賀さんは私の考えを非難するようなことを言うに違いない。

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