第90話 似たもの夫婦 その20 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 俺は早速、会社に戻って他のことでも確かめることにした。まずは総務の女の子に対してだ。

 

「木村さん、いつもお疲れ様。そして見積書をいつもすぐに作ってくれてありがとう。さっき中丸商事との商談をまとめてきたから、早速で悪いけど見積書をつくってくれるかな?」

 

 すると木村さん、にこやかに笑って「ハイ」と返事をしてくれた。これには驚いた。

 

 というのも木村さんはどちらかというと無愛想な方。特に俺が見積書や納品書の作成を頼むと、いつもブスッとして「はぁい」と間延びをした返事をしていた。けれど今日は何かが違う。いや、違うのは俺の方か。俺がまず木村さんに対して「ありがとう」なんて言うものだから、木村さんも機嫌が良くなったのだろう。

 

  よし、この調子で家に帰ったら自分ができることを始めて、さらに妻に対して「ありがとう」の一言でも言ってみることにするか。そうすれば何かが変わるかもしれない。俺は期待に胸を弾ませて、いよいよ家に帰る時間を迎えた。

 

 今夜は珍しく家で食事だ。最近は付き合いもあったが、どちらかといえば家で食事をしたくなくて、それであえて外食をしていたからなぁ。さて、今夜はどうなるのか。