俺は早速、会社に戻って他のことでも確かめることにした。まずは総務の女の子に対してだ。
「木村さん、いつもお疲れ様。そして見積書をいつもすぐに作ってくれてありがとう。さっき中丸商事との商談をまとめてきたから、早速で悪いけど見積書をつくってくれるかな?」
すると木村さん、にこやかに笑って「ハイ」と返事をしてくれた。これには驚いた。
というのも木村さんはどちらかというと無愛想な方。特に俺が見積書や納品書の作成を頼むと、いつもブスッとして「はぁい」と間延びをした返事をしていた。けれど今日は何かが違う。いや、違うのは俺の方か。俺がまず木村さんに対して「ありがとう」なんて言うものだから、木村さんも機嫌が良くなったのだろう。
よし、この調子で家に帰ったら自分ができることを始めて、さらに妻に対して「ありがとう」の一言でも言ってみることにするか。そうすれば何かが変わるかもしれない。俺は期待に胸を弾ませて、いよいよ家に帰る時間を迎えた。
今夜は珍しく家で食事だ。最近は付き合いもあったが、どちらかといえば家で食事をしたくなくて、それであえて外食をしていたからなぁ。さて、今夜はどうなるのか。