今朝は、昨日の雨が残っていて、道路のアスファルトは濡れて沈み、峠の足元はきらきらと陽射しを跳ね返しています。
フロントグラス越しの空には、ブルーグレーのカーテンの隙間から朝陽が顔を覗かせていました。
清々しい一日のはじまりに、カーステから流れてくるお気に入りの曲をなぞるように口笛が口をついて出てきます。
最近は、カントリーが多いですが……。
明日は、アルトサックスを習っている音楽教室の音楽会があります。
隣の町の総合文化会館というところです。
コンサートや演劇も催される会館で、比較的音響がよく安心して観られるのがうれしいところです。
早くて来年、遅くとも再来年には、そこでデビューを果たしたく思い、タイムマシーンに乗って未来の自分を確かめに行くような気がして、なんだか心が弾みます。
ジャズ・コンボです。
アンサンブルの一員ならごまかしはいくらかは可能なのかもしれませんが、少ないとは言え観客の前でソロとして演奏するので、プレッシャーが大きな岩のように身体に圧し掛かります。
社交ダンスも同じですが、名越明子さんとジルバを踊ることだって、度胸をつけるにはうってつけです。
そうやって、少しずつ頼りなさを様々な鎧で補っていくのでしょうかね。
アルトサックスは、キャノンボール・アダレイの演奏に触発されて、20代半ばくらいに水道橋の楽器屋さんで購入したのがはじまりです。
大きな鳥が気流に乗って空高く舞い上がるようなキャノンボールの演奏に、度肝を抜かれ、また強く惹かれたのが10代後半です。
タイヤが軋みながら煙を巻き上げ、信号無視ぎりぎりに猛スピードで交差点を駆け抜けたかと思うと、舗装をしていない田舎道を悠然と景色を楽しみなたら走ってみたり……。
日本人では、やっぱりMALTAさんが一番好きです。
最近はアルバムを出していないような気がしますが、80年代は様々なシーンで活躍されていました。
煙草のCMのカッコよさには参りましたね。確か、キャビンです。
4ビートのジャズはクラブやライブハウスで、アルバム制作は青く突き抜けるような空と夜景を見下ろすような高速が似合うフュージョンです。
基礎や基本を踏まえた演奏は、どんなにスタイルを変えても心にずしりとした感動を与えてくれます。
テクニックをひけらかすことなく、音楽を熱く胸へと届けてくれます。
言葉を届けることさえも、緊張していると真意は伝わりにくいもの。
基礎を踏まえてしっかりと自分のものへと消化させ、多くの滋養を取り込んでは一つ上のステージへ。
それは、どんなことにも共通する必須条件であり、また未来へのパスポートのような気がします。
this old world wouldn't be half as bad
it wouldn't be half as sad
if each and everybody in it had
ダスティ・スプリングフィールドの『ジャスト・ア・リトル・ラヴィン』の歌詞の一部です。
パッツィ・モンタナやジャッキー・デシャノンのような方がいてくれたからこそ、今にも素晴らしい曲が残っているのも事実です。
ダスティ・スプリングフィールドも私にとっては、そんなくくりの歌手の一人です。
おおらかさが少し前に出た感じです。
この曲をニコール・ヘンリーが歌うと、なんとも言いようのない哀愁が胸に迫ってきます。
この人の『クライ・ミー・ア・リヴァー』は、私の中ではナンバー・ワンです。
ニコール・ヘンリーの歌う『just a little lovin'』、アルバム『embraceable』より。

