今日は、青空が頭上一面に広がっています。

 

バイクで通勤しようと思いましたが、玄関先に出た途端、冷たい風が鼻先をくじきました。

 

でも、昨年、一昨年と耐寒ジャケットの下にオーバーパンツを履いてバイクで通勤、会社に着いて事務所でそれらを脱ぐ。

 

やっぱり、面倒なんですね。

 

でも、やせ我慢をしないと、やっぱり粋ではありません。

 

なんとなく、いつもそう思っています。

 

 

人は好き嫌いや合う合わないを、瞬時に判断するものらしいです。

 

だから、ファースト・インプレッションは大事、みんな面接のときには見映えのしないリクルート・スーツです。

 

それにも、ちゃんと意味はあるのでしょうけどね。

 

『カサブランカ』という映画、初めて知ったのは高校生の頃です。

 

『メンズ・クラブ』というトラッド・ファッション雑誌の映画紹介で、それぞれのシーンにおける服装の着方なんかをメインに掲載されていました。

 

当時の自分にとって、まさに弩ストライクな雰囲気の映画でした。

 

ハンフリー・ボガートのキザな演技。

 

イングリッド・バーグマンの濡れた瞳。

 

シーンを彩る『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』。

 

視覚的に映る直接的な魅力に、VHSの字幕版を何度も繰り返し見ていました。

 

大人になった今でも、時々書棚から抜き出しては、煙草を片手にじっくりとDVDを観ます。

 

それで気づいたのが、こうしたいけどそうできない、というような葛藤に揺れる機微のありように心を奪われる、ということです。

 

思いがけない再会がもたらす期待や怒り、そして相手への気遣い。

 

亡霊となって、夜明け前の町を彷徨いながら“あの頃”の残滓を探しまわる。

 

心を奪われたあとは、肉体こそ目の前にはないものの、思いはいつまでも美しく脳裏に焼き付くもの。

 

初めの頃の印象とは違う思いで、今は見ています。

 

ある意味、自分の過去の想い出を投影しているかのように……。

 

 

 

3年前に作品を決意を固めるために一度形にしたのですが、それを完成させるにあたり亡霊の存在を心の中に感じるようになりました。

 

そうっと息を吹きかけると、生々しくも鮮やかに記憶が甦ります。

 

覚悟と引き換えにしたもの、それは心の襞にしっかりと縫い付けて誰にも見せなかったもの。

 

風のように通り過ぎて行った方から教えてもらったDVDの続編を観て、思わず溜め息をついてしまう。

 

『before sunset』。

 

 

the way you hold your knife

the way we danced 'till three

the way you changed my life

no, no, they can't take that away from me

no, no, they can't take that away from me

君は僕の人生をすっかり変えてしまったってこと、みたいな感じです。

1937年、ミュージカル『shall we dance』でアステアが歌った曲の歌詞の一部です。

『誰も奪えぬこの思い』。

こんな気持ちは、どんな人の過去や現在、未来にだって、輝きを放ちながら存在するものだと思います。

甘いだけでなく、しっかりとした苦みを含ませた柑橘系の果物のようなもの。

若い頃のエッタ・ジョーンズです。声には張りの伸びがあり、未来を見据えたエネルギーに溢れています。

(晩年の夫との演奏のほうが、個人的には好きですが……)

アルバム『from the heart』より。