「もうこれ以上、カー君とは付き合えない」ミアから下山田に、別れ話を電話でした。下山田は納得いかず、「周りが言うから別れるんだろ。ホントは別れたくないんだよね?」としつこかった。

ミアはキッパリと言った。「行動も優しさも、体目当てで付き合ってるとしか思えない」あっちが話そうとした時、ミアは電話を無理矢理切った。その時、ムサシが1人、別の部屋で踊っていた。別れ話の電話をしている時、アイ、ムサシ、なみ、ミアの母は近くで聞いていたのだ。

別れたすぐだったのもあり、ミアはまだ下山田のことが好きだった。「電話したい」と言ったが、「相手に未練があると思われる」と、止められた。


2学期が始まる前に、ミアは寮へ戻った。結局、下山田に一度も会うことはなかった。日が経つたびに下山田に対する気持ちは薄れ、逆に一成に対する気持ちが、次第に高まっていった。

「好きなのは下山田じゃない。一成なんだ」はっきりと確信した。

ミアはなみに手紙を出した。『下山田のことは、もうなんでもない。けど松田君のことが少し気になる』と。


寮に戻ってからも、下山田からしょっちゅう電話がかかってきたり、手紙が来た。ミアは母から「ミアに会ったり、寮に電話するなと、下山田に言った」と聞いていた。電話もかかってくるたびに長くなり、とうとう5時間となったため、寮側から電話拒否・門前払いされるようになった。


冬休み。ミアはまた実家へ帰ってきた。下山田に1番会いたくなかった。

なみと、中学時代の話で盛り上がった。そこで、一成の話となった。ミアから言い出したのだ。

「松田君に、会いたいなー」「ミアさ、松田君のことが気になるって、手紙に書いてあったけど、もしかして、下山田さんと付き合った時も、松田君のこと気になってた?」

「うん、ずっと気になってた」

「そっか。アイさんが言ってたんだ。ミアは本気で下山田さんのこと好きじゃないって」「あれ、下山田を試したのよ」「ミアーっ、試したなんて」ちょうど下山田が出勤し、家に入ってきた。下山田は、ミアの話し声に気付いたが、ミアは下山田が、自分たちの話を聞いていることには気付かなかった。

「下山田さんのことなんか、少しも好きじゃないんだね。じゃ今は・・・」「松田君のことが、好き」「そうか、それはそれでいいと思うな」「それでね、松田君に会いたいの。どうしよう・・・」「うーん。そうだ。卒業アルバムで電話番号調べよっか」早速、アルバムに載っている住所を元に、タウンページで番号を調べ、電話をかけた。下山田は、耳を澄まして盗み聞きした。

「もしもし沢詩ですけど、一成さんいらっしゃいますか?」家の中は静かだったため、ミアが電話で話していることが、下山田に聞かれていたのだ。

「松田君、大学行くんだー」「うん。沢詩は?大学受けるよね?」「うん。とりあえず地元受けようかと思ってる」「そうかー、沢詩はすごく頭がいいから、絶対受かるよ。受かる自信ないんだ、オレ。もしかしたら一浪するかも・・・」「そんなことないっ。まだ日にちあるし。自信持ってよ」「高校も、第一志望ダメだったからさ、心配で。113時間勉強してるんだけど・・・」ミアは一成の弱さを一気に見せつけられた。

「頑張って」お互い励ましあって電話を切り、ミアとなみは外へ出た。下山田は、部屋に置き忘れてあった一成の住所と電話番号のメモを見て言った。「松田・・・一成か。こいつさえいなければ・・・」

5日後、ミアは寮へ戻った。