私が働く一般棟にもBPSDも軽度で比較的落ち着いた認知症の利用者が入所しています。
(最近はクリアな利用者より認知症の利用者が増えてきている)
それでも就寝前には私のところに来て「明日は帰れますか?」
「家のことが心配で心配でたまらないんですよ…」
そう言って私のところに訪ねて来る利用者さんがいます。
「今日は事務所も閉まってしまって、今後の詳しい日程は分かりません」
「明日9時になったら事務所の職員が出勤するので一緒に聞いてみましょう」
そう言って私はいつも気分を落ち着かせてもらっています。
我々現場の職員だって、この利用者さんがもう在宅復帰出来ないことは分かっています。家族がそれを望んでいませんから。
でも本当のことは言えません。
だって本人はいずれ家に帰れると思っていますから。
それに自分の今いる場所も分かっています。
在宅復帰が基本となる老健と………
こんなやり取りが就寝近くになると毎日のように繰り返されますが、認知症も軽度なので出口を探す行為もありません。
ただ家のことが心配…
家族のことが心配なのです。
でも翌日になれば昨夜のことなんて忘れてしまっています。
今日も元気にリハビリやレク活動に参加されています。
本来ならば今後在宅復帰できる予定がないことを告げるべきなのでしょう。
でも自宅の家族も高齢ですし、持病もあるらしい…
到底在宅での介護は無理なのです。
今後は老健に入所しながら特養の空きを待つことになっています。
職員の中には、もう在宅復帰できないと、本当のことを話している職員もいるようです。そんな時は只々悲しくて居室にこもってしまうのですが……
実際私は嘘を言って、その場をやり過ごしているだけの対応です。
でも本当のことを言って、悲しい思いをさせるなら、ついても良い嘘もあるのではないのでしょうか…
嘘を言ってもまた明日から元気にリハビリができ、レク活動も笑顔で参加できている。
夕方になれば家のことが心配になるけれど………
認知症棟では当たり前のようにあった優しさの嘘が、一般棟では直球に本当のことを言ってしまう職員もいます。
勿論帰れないことは嘘ではないのですが、家族が在宅復帰を望んでいないなんて、そこまで直球に言ってやしないかヒヤヒヤものですよ……