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明け方から仔犬の泣き声が聞こえます、
弱々しく「キャンキャン、キャンキャン」、
なにかもの悲しいその声、
「お母さん、お母さん」と泣いているのかな。
その声は、
向かいのアナベル(女性30代)の家から、
トライシクルに乗せられた大きなカゴの中、
もう泣き疲れたのか、鎮まってきます。
ボクが近寄ると、
アナベルの旦那さんがカゴから、
「イトイだよ」と、
イトイとは仔犬という意味です。
ボク「それにしてもオマエ、
まっ黒じゃないか、
名前はクロだな」、
旦那さん「弟の家の仔犬なんだ、
お母さんに会いたいんだろうね」、
放し飼いの番犬が多く、
道端で「結婚」し、
仔犬もぽこぽこ産まれて、
こうして貰われていくのがフィリピン流。
もうしばらくの間、
夜にはクロの「お母さん、お母さん」が、
コオロギの鳴き声と、合わせ聞こえてきそうです。
まっ黒で短い鼻先に、まっ黒な瞳、
その瞳にじっと見つめられたら、
手を伸ばさずにいられる人って、
いるのかなぁ。
ではどうして、
手を伸ばしてしまうのでしょうか?
スティーブン・キングは、
小説の序文の中、自身の子供たちに向け、
「私の子供たちよ、魔法は存在する」
そう明言しています。
それは、
ほんとうかもしれませんね。

