7:30
片側二車線のマッカーサー・ハイウェイまで、
今井さん(男性50代)の車で送ってもらい、
そこでジプニーを拾います。
前の夜、
今井さんが「S & R /会員制スーパー」で、
豚のバラ肉を買い、焼き肉をごちそうしてくれ、
ビールもじゃんじゃん飲み、飲み、
夜に帰るのも大変だろうと、
お言葉に甘えて、泊めてもらっちゃいます。
豚のバラ肉、
マーケット、普通のミートショップ、
それにトリルのモールでは売ってないんです。
ダウンタウンのそれなりのモール、
気の利いたミートショップでは、
豚のバラ肉の「意味を理解して」、
スライサーにかけてくれたりもしますが、
一般的ではない豚のバラ肉。
ボクのフィリピン人の知り合いで、
何人がそれを知っているんだろう。
ボクの子どもの頃、
共同トイレで、六畳と四畳半のアパート暮らし、
母から「バラ肉200g買って来て」と言われ、
近所の肉屋へ、
当時としては珍しく薄っすら化粧をして、
髪をひっつめたキレイな奥さんに、
ボク「バラ肉200g ください」と。
その女性の顔を見るのが、ちょっと恥ずかしく、
冷蔵ショーケース上に置かれた、
秤(はかり)の鋭くピンとした針だけを見て、
「どうして、秤の針が外側に付いているのに、
肉の重さが判るんだろう?」
ボクは内側にも同じように針があり、
その針を見ながら計っているのを、
ずっとあとになって知ります。
バラ肉があれば、生姜焼きや牛丼のように、
煮汁にからめて、あるいは玉子を落としからめたり、
味を染み込ませて、ひと味もふた味も変えられ、
料理のバラエティもぐっと広がります。
まぁ、こんなことは、ここへ書かなくても、
これを読んでくれる方は、知っていることですが、
ここ北緯7度で、
ボクにとって「ゼイタク品」なんです。
子どもの頃、あたりまえに、
どこでも買えたその豚のバラ肉が。
昨夜の空気がまだ残り、
乾いた西風が肌寒い夜明け前。
ココナッツの幹より傾いている、
電柱に張られた電線の間を、
スズメたちが「チュンチュン、チュン」と、
行ったり来たりし始め、

今井さんがコーヒーを淹れてくれます。
スターバックスでの豆で淹れたモノを、
「やっぱりホンモノは効くなぁ」と、
つい、ため息まじりで言葉が出ます。
バラ肉の焼き肉を食べた、
ゼイタクな昨夜を思い、
ホンモノのコーヒーの香りを、
もう一度口の中で反すうする、
そんなゼイタクな、フィリピンの朝です。