トリル
大家さんは毎週日曜日に教会へ行き、
何かと、
「神さまに感謝 /Salamat Ginoo 」を言う、
まぁ、信心深いほうの人たちです。
ここの三割くらいが毎週教会へ行き、
田舎のほうでは半数くらいでしょう。
ただ、その人たち全員が、
「神さまの言うことを聞く」、
わけではありませんが (笑
そんな大家さんがボクを気遣ってか、
教会のクリスマス・パーティに誘ってくれ、
毎日顔を合わすので、行かないのもアレだなぁ、
ということで、

フィリピンらしく30分遅れで着いて (笑
まだ、ほとんどの人が来てませんが、
チビたちの歌声は聞こえます

ここの神さまは、
「時間」などという、
ケチなことは言わず、
優しく慈悲深いんです。
この後、パスター(牧師)のスピーチ、
これが、なかなか長くて、
子どもたちは走り回りだし、
大人たちも携帯いじり始めたり、
オシャレな黒いエナメルバッグから、
チョコクッキーの小袋出して食べ始めたり、
ボクは「空き袋を床へ捨てる方に、100ペソ」と、
自分自身のココロの中で賭け、
勝って、架空の200ペソを手にします (笑
両側の壁に等間隔で据付られた扇風機が、
ゆっくり首を振り、
その空き袋をボクの足元へと静かに運び、
ボクは「チッ」と舌打ちして拾い、
リュックのサイドポケットへ押込みます。
今まで、この教会には設立記念日、
牧師の誕生日パーティの二回来ていて、
どちらも同じようなことがあり、
これがあるので来るのを迷っていて、
「またかよぉ」と。
キャンディの小さなシルバーの包みが、
扇風機の風にゆっくりと押し流されて来て、
もう一度「チッ」と舌打ちし、
拾おうとお尻をわずかに上げ、
その時、後ろから小さな男の子が来て、
サッと拾って戻り、お母さんへ手渡します。
ボクは静かに鼻から息を吐き、
振り返って男の子と、お母さんと目を合わせ、
子どもは、ただボクをじっと見つめ、
お母さんは、ほんの少しだけ口元をゆるめます。
牧師の長いスピーチも終わり、
この教会が力を入れている、
若い男性リーダーと女性(ほとんど大学生)の、
教会の歌、というよりポップス感ある歌が続き、

40センチのウーハースピーカーを震わし、
天井も、壁も、そしてボクの全身を震わせ、
リーダーの短髪の毛先に、
霧吹きしたような汗の粒が光ります。
さらに、
「教会の」とは思えない、
ハイテンポなダンスへと続き、


リーダーの歌声が、女性たちのコーラスが、
液体のように建屋内を満たし、
なにか不思議な一体感のようなモノがあり、
彼らが伝えたいこと、そしてその方法は、
「歌とダンスだけ」、
その他では無理で、必要でさえ無い、
「これが、私たちが見つけた方法なの」と。
気づくとボクの呼吸も荒くなり、
身体の中は、まだその振動が残っています。
この日、教会で起きたこと、
それは、良くも悪くも、
なにか「フィリピンを凝縮したような出来事」、
そんな気がします。
しかしながら、
彼らの若さと、エネルギーが、
正しい方向を見つけ、
正しく進んで行くならば、
「これが、私たちが見つけた方法なの」
きっと、その通りになるでしょう、
みなさん、メリー・クリスマス。