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ゆるい起伏が続く住宅地、
戸建て住宅のあい間、低層階マンションがまばらにあり、
その傾斜地に、番地一つ分の公園。
大人二人が、手をつないでも届かないほどの桜の幹に囲まれ、
ツクツクボウシがせわしなく鳴く公園で、
ボク、けんすい運動します。
子どもたちが、ケガをするキケンのある遊具類、
腕や脚を挟み込んだり、回転軸に直接触れるモノ、
それらは、とうに撤去され、
転落防止バーが後付けされた滑り台、
ボクがけんすい運動する、うんてい、
そして、ブランコ。
公園にいるのは三人、
ブランコを立ち漕ぎする、
楕円形の度のきついメガネをかけた女の子、
彼女に付き添うお祖父さん、
そして、ボク。
黒いアシックスのウォーキングシューズ、
ベージュのチノパンに、胸ポケットがついた白いポロシャツ、
ポロシャツの下には、ランニングシャツ。
右手を孫娘の腰にあて、
そっと押しながら、穏やかな口調で、
「少し曲げたヒザを伸ばして、
腕をグッと引いて漕ぐんだよ」
かつては、その口調で部下に話しかけていたのでしょうか。
ですが、孫娘はなかなか要領を得ず、
それでもお祖父さんは、物静かな和尚さんのように、
そっと、腰を押してあげ、
左手に持った、パステルピンクの水筒だけが揺れています。
ツクツクボウシが鳴き続ける音だけの公園で、
ボクはけんすいしながら、ふと、
「ブランコの漕ぎ方、(誰かに)教わったかなぁ?、
教わってないなぁ、じゃあなんで出来るんだろ?」
きっと、
そういうモノなんでしょうね、
四十年以上前は。
