毎朝、木の重いドアを開ける前に、
「今日はノラ動物(含む人間)の、
" 落し物 "がありませんように」と、
小さく祈りながら、そっと開けるんです。
「ぁ~、良かったぁ、神さまありがピョ~」
んん~?
鉄筋棒とアングルバーで、
テキトーに作られた螺旋階段下に、
ゴハンの一かたまりがあり、
「ぁ~また、二階でエサあげたんだなぁ~」
大家とケアテイカー(管理人のような人)には、
食べカス、落し物、そしてブンブン飛び回る不快害虫、
「汚いからエサあげないように言って下さい」と、
伝えてはありますが。
というのも、
このアパート契約前に「契約条項」を、
フェイスブック・メッセンジャーで送ってもらい、

だらだらと、18項目もあり、
「壁、天井、床にキズつけたら借主負担で修理・・・
一般常識以上の騒音を出さない・・・
一般常識以上の不快なニオイを出さない・・・」
等々厳しく書かれ、
最後の18項目は、
「裁判で争う際には・・・」
ぁのさぁ~、一丁前な事言うね~、な内容文。
そして、ケアテイカー(彼らも借家人)を含め、
まともに、これらは守られてないし、
気にもされてない感じです。
まぁ、気は進みませんが、
螺旋階段を上がり、掃除してと、伝え、
30代の小太り奥さんが、
ココナッツの葉の芯だけで作られた、
ホウキ(フィリピンで一般的)を手に降りて来て、
ゴハンの一かたまりを、隣の敷地と、
ボクを含め四家族が通る、
狭いコンクリート通路へと掃き出します。
「あなた、気は確か?」と、思いながらも、
「ストップ、ストップ、それじゃまたネコが来るよ!」
語気が荒くなり、
奥さん「ネコだって、ゴハンが必要でしょ!」
ボクはもう一度「あなた、気は確か?」とココロの中で。
本来、ボクはこの時点で「悟るべき」でした、
二人の間に、もう会話は成立しない事を。
ですが、
頭にカッと血がのぼり、
「じゃあ、あんた毎朝掃除しろ!」
奥さん「ここは、あんたの場所でしょ!、
そんな事、オーナー(大家)に言ってよ!」
そうとだけ言って、螺旋階段を上って行きます。
ボクは半ば肩で息して、
呼吸を落ち着かせようとしつつ、
「チッ、フィリピン人のスーパー屁理屈、来たなぁ」と。
家賃を払いに大家宅へ行った際、
この件を話し、話しながら大家の表情からは、
「そんな細かい事、なんで気にするの?」
そう伝わって来ます。
そうです、みんな知っている事なんです、
契約書と、実際とを。
万が一、何かを壊した時だけ契約書、
18項目もの事細かい、
無視され続けている文面が生きてくるのです。
ルールを守れない事は、承知での双方の契約、
気づかないのは、ボクだけ。
これが五年前なら、
完全に怒り狂ったでしょう。
これが五年後なら、
完全に打ちのめされ、帰国していたでしょう。
まぁ、「今、この歳」だから、
持ちこたえられている、そう実感します。
ボクは、この国から頼まれて来たわけでもなく、
自分から望んで来たわけです。
ですから、この国のルールに従うのはあたりまえ、
それどころか、従う義務があるのです。
ですが同時に、
エンジョイする権利もボクにはあるのです。
上等だよ!、
エンジョイしてやる!
