ガイサノ(総合スーパー)モールの幅広いレシート裏に、
野菜、果物の買う物を書き、
そのリストを手にニンジン、玉ねぎ、トマトなどを買いに、
トリルのマーケットへ、

野菜は、元ジャパユキのエバ(38歳)のお店へ、
ここで「ジャパユキ」は、それ自体が職業のように話されます。
マーケット内でボクが話したことのあるジャパユキは4人、
皆さん、日曜日も休んでないので、
商売は厳しいようです。
「コニチハ、ゲンキぃ、アリガトネェ~、
ダイジョーブ、ダイジョーブ」
数字も10までなら日本語、
まぁ、日本にいたのはもう10年以上前ですから。
エバ「どこに住んでるデスカ? / Asa ka nagpuyo ? 」
ボクは自分の住んでるエリアを応え、
エバに、同じことを訊き返し、
エバ「 ここよ 」
ボク、「訊かなきゃよかったなぁ」と、
ココロの中で舌打ちします。
「ここ」とは、マーケット内にある、
錆びたトタン屋根と、雨染みが筋跡になったコンパネで、
二列の長屋状にずらっと、壁を共有する形で並んだ家。
長屋と長屋の間にはハリガネが渡され、
隙間なく、洗濯物が直に二つ折りに吊るされ、
重みに垂れたハリガネが、
建屋の間に何本も渡されています。
または、
狭い間口の幅ぎりぎりにトウガン、玉ねぎ、
ニンニク、ニンジン、トマトが小山に積まれた、
コンパネで枠が付けられた棚の奥、
20インチのブラウン管テレビが置かれた、
三畳ほどの空間のこと。
エバの子供2人、お母さん、弟、旦那さん、
その人数を思い出し、
ボクは「そうなんだぁ」というふうに、
軽く数回頷くだけ。
エバはハミングしながら、玉ねぎの汚れた薄皮を剥がし、
その小山へ、手際よく放ります。
ボクは黙って、買い物リストのトマトを、
できるだけ熟していそうなヤツを選びます。
ローカルのトマトは日本より小粒、
並んでいるのは、ほとんどが青いモノ、
硬く、香りなく、そのまま食べても、
美味しいモノではありません。
まぁ、ボクはそのまま食べますが。
リストのトマト、ニンジン、ニンニク、玉ねぎと、
ボクがいつも持ち歩いている、
全粒粉食パンの空き袋を一緒に渡し、
レジ袋は辞退します。
最初は、どのお店でも笑われましたが、
今では袋を忘れると、
「あれ、プラスチックバッグは?」って訊かれます(笑)
週2回通うジムへの途中の電器店、

ボクはここで何も買ったことありません(キッパリ)
並びのセブンイレブンでブラックコーヒーを買って来て、
ここでオシャベリするだけです(笑)
まぁ、皆さんちょうどいい暇つぶしに、
ボクとカンバセーションするわけです。
管理職のマーティンに、
ボク「ボク、冷蔵庫持ってないんだよねぇ」
少々のことでは驚かない彼ですが「マヂカルぅ?!」と、
面白がるだけで、ボクへ冷蔵庫を勧めようとは全くしません。
以前、記事に書いた電気代の、請求金額の写真を見せ、
きっと「こいつは変態だからダメだなぁ」、
そう思われているのでしょうね。
マーティン「食べ物の保存はどうしているの?」
ボク「その時必要なモノを必要な分だけ、マーケットで買うよ」
マーティン「必要分だけ、それが一番、自分で保存する必要ナシだよね、
それがダイエットの秘けつかもね」
そう言いながら、自身のシャツを押し出す勢いのお腹を撫でます。
「自分で保存する必要ナシ」、
ボクはその言葉にハッとします。
それは「誰かが保存してくれている」ということで、
その誰かを「冷蔵庫代わりに」使っている、そういうことです。
お店の前に置かれたプラスチックの黒いタライ、
泥つき生姜の泥を小さなブラシで、
一つ一つ洗うエバの手先。
指先よりも短く切られた爪、
その爪は、泥水と同じ色で縁取られています。