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トリルのメトロバンク前に立っているだけで、
その道路向かいにある、コーオペレーティブビル4階から、
セリーヌ・デュオン「マイハート・ウィル・ゴーオン」の、
微振動を伴った音が身体に伝わってきます。
「ちと早かったかなぁ、まだエアロビやってるわ」と、
舌打ちして、仕方なく階段を上がります。
4階の「パワーフィットネスジム」入口前を見た瞬間、
「あぁ~、今日もツイてない!」
プラスチック椅子に座り、テーブルに両脚を組んで載せている、
ジム、オーナーの色黒のエンピツのよう姪、たぶん12歳。
両手にタブレットを持ち、猛スピードで指を動かし、
ディスプレイをたたいています。
オーナーは「先生が病欠で学校休み、授業料払ってるんだぜぇ」と、
不満をボクへ言います。
フィリピンで、先生が病欠で授業ナシ、は普通なようです(笑)
ボク「ん~~ん、あんたたち、好きなようにやんなょ」とココロの中で。
耳栓をして、なんとか、入口で見てしまった奇行も、
頭の中から締め出し、トレーニングを始めることに。
片付けられず床にころがるダンベル、バーベルシャフトを避け、
「あのさぁ~、いちおう大人なんだから、
このくらい片付けようぜぇ~」と思いながら、
ストレッチをしていると、今度は、
9歳の甥がローラーシューズでジム内を走り始めます(怒)
ボクの傍をかすめた時、
ボク「 Go , out ! / 出て行け!」と入口を指差します。
言ってしまった瞬間、ボクは「ヤバい」と、
声の大きさ、そしてそこに怒りが込められていたことが。
エアロビを終えオシャベリに夢中だった、
周りの15人ほどが一斉にボクを見て、
その表情は、
「おいおい、フィリピンは自由の国なんだぜ~」と、言ってます。
甥も同様に、ポカンと口を開けたまま、
「何言ってんのぉ~」と、そんな感じで、また走り出します。
ボク、舌打ちして「我慢すればよかったなぁ~」と。
こういった状況で大人が注意するのは稀で、
その大人たちも、子供だった頃、そう育ってきたように。
「はぁ~」とため息ついて、裏の非常階段で深呼吸。
そこに、裏の屠殺場にパトカーと警察官4人、

「 Tok Tok Hangyo 」トクトク・ハンギョ、
約して「トクハン」、
ラジオでもよく聞く、5歳の子供でも知っている言葉、
麻薬(シャブ)常習者宅を訪れ、最後通告書へのサインを求めます。
友人のジュン(男性46歳)、他3人と、
ローカルウィスキーを回し飲みしている時、
ジュン「トクハンの後、次にシャブをやったら、
地面6フィート下に横たわることになるよ」
チェイサーの水を飲みながら、そう気軽に言います。
ジュンは「横たわる」と言います、「眠る」ではなく、
確かに、オートマチックの45口径、あるいは、
M-16自動小銃の弾丸が打ち込まれた身体では、
「眠る」とは言えません。
フィリピンでは、物事、問題は「事後」に処理され、
その「事後」が最期になる事も、少なくありません。