シリアルの空箱を切り開き、厚紙にして、
内側、うす茶の無地にコンパスで円を描き、
小さな目盛りを十二等分つけていきます。
等分された目盛りに、数字「12、3、6、9」とふり、
時計の出来上がり。
16:30
黒砂の地面へ西陽が射す、スクワッター(違法居住)ゾーン、
1.5キロ離れた小学校から制服姿で帰って来る、
日焼けした子供たち。
毎日学校へ行くのは半数ほどのようですが、
「時計」には一様に興味を持ちます。
アニカ、女子11歳、3時を示すイラストに、
腕組みして、首をかしげ、円の中のからくりを見破ろうと、
顔を近ずけたり離したり。
くせ毛に褐色の肌、フィリピンでは珍しい一重の目、
その目は、モンゴル平原を駆けまわる子供のようです。
アニカはどんなに考えても、十二等分された円の中、
六十進法と十二進法を見破ることが出来ません。
もちろん、そのからくりを見破り、
時刻を正しく答え、「次は?、次は?」と、
リクエストの声もあります。
次に「 7 X 5 」は?、と質問します。
アニカ「(答えを)言わないで、言わないで!」と、
手のひらで「先生」を制しながら、
地面に小枝で線を一本一本引き始め、
7本の線を丸で囲み、同様に線を描き続け、また丸で囲み、
その束を5つ描き、1、2、3、4・・33、34、と数え上げ、
大きな声で「35!」と。
先生、口が開いたまま、「生徒」を褒め忘れます。
もし「 15 X 13 」だったら、
どれほどの地面が必要でしょうか(笑
これも同様に、
九九が頭の中で、横軸と縦軸の交点として、
すぐに引き出せる子供もいますが、少数です。
11:45
トリルのパブリックマーケット周辺で、
ボクが行くカレンデリア(庶民の食堂)は5カ所、
どこも「それなりに混んでいる」、
それも大切な判断材料のひとつ。
「他の人たちにも選ばれている」こと。
その一軒で、お店のお母さんが、
バイクで乗り付け、ヘルメットをかぶったままの大柄な男性に、
赤い50ペソ紙幣を渡し、彼は小さなノートへメモを書き込み、
それをお母さんへ手渡し、またバイクへまたがり走り去って行きます。
ボクはお母さんに、
「あれインド人?、お金借りたの?」
お母さん、
「そうなのよ~、前に借りたヤツなのよ~」と。
フィリピンでは一般的な、
「ファイブ・シックス」と呼ばれるインド人の貸金業、
500借りたら、600返す、金利20%、
年利ではなく「月利」、そして違法です。
フィリピン人はインド人のことを「ブンバイ」と呼び、
ブンバイとはタマネギのこと、
インド人の体臭をからかった、子供の屁理屈のような呼び方。
そこは、借りずには暮していけず、
きちんと返済出来ないフィリピン人の金銭感覚を見抜いた、
インド人が一枚も二枚も上手でしょう。
インド人は毎日、あるいは毎週集金し、
その資金を次の借り手へ貸し付け、
利益を得つつ、お金を循環させています。
ボクがマーケット内、周辺で、
集金に来るインド人を見なかった日は、1日もなく、
それだけ需要があり、浸透しているのです。
共存とは言い難い、奇妙でありながらも、
持続的な相互依存のような関係。
ドゥテルテ政権は、その違法貸金業を取り締まり、
合法的で低金利、を展開する、とのこと。
結構なことですが、
そんなこと本当に出来るのでしょうか?
合法的な業者から借りられなかった多くの人たちが、
インド人たちから借り、
インド人たちは審査などなく、彼らの基準で、
貸し付け限度額があり、即貸し付けです。
インド人はお金の扱い方を熟知しています、
数字の意味をはるか昔に解き明かし、
そのからくりはしっかりと、頭の中に刻まれています。
マーケット内のパン屋でガラスカウンター越しに、
5ペソのマフィンを、「これね」と指差し、
店員が「いくつ?」と訊き返します。
ボクは人差し指を立て「1個」と応え、
薄く小さなレジ袋に入ったマフィンを受け取り、
5ペソ銅貨と交換します。
歩きながら食べ始めると、
パン屋の向かい、雑貨露天商の若い、
というか、小学校へ行ってない鼻ピアスの女子が、
ボクを呼び止め英語で「お金、落としたヨ」と。
小銭を取り出す際に落とした20ペソ紙幣2枚、
初歩の初歩、
そんな、
お金の扱い方も出来てないボク(苦笑