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“ 暑くて、やってられねぇ〜 ”




ボクの住むサブデビジョン(住宅地)と、

グリーンベルトを挟んで反対側に、

全域黒砂と丸い石がゴロゴロする砂利道のエリアがあります。


排水路は整備されてなく、その砂利道傍を生活排水が、

より低い方へと静かに流れて行きます。


そのエリアにくっつくように、

18家族が暮らす、スクワッター(不法居住)ゾーンがあり、

電気はきてますが、水道はありません。

電気はダバオライト、私営の会社、

水道は公営団体(施設)で、住所がはっきりしないと、

登録、配管、メーター設置されないそうです。



ですが、スクワッターゾーン内には何ヶ所か、

外蛇口がついています。


ゾーンに接した所に住むジェイ(男性50代)に訊くと、

「あ~、うちからポリパイプで配管したんだよぉ、

   彼らは水道引けないから、オレが分けてあげてるんだよ。

   料金は、オレに払うわけ」と。

自宅敷地内にはう黒いポリパイプを指差します。

ボク「マヂカルぅ~!」

個人の勝手な水道水小売り(笑)



とはいえ、ゾーン中ほどにある、

ドラム缶の蓋と底をくり抜いた筒を、

縦に4本埋め込んだ井戸が彼らのメイン。

ポンプはなく、ナイロン紐がついたバケツを落とし、

水を汲み上げ、食器洗い、洗濯、

行水もそこで行います。






5:45

うちの前の砂利道を、ビーチサンダル履きの足音、

歩幅が狭い子供の。



斜め前のアガピートさんの家の鉄ゲートに向かい、

「残飯ありますか?/ Naa  moi  lamaw ? 」

毎朝、豚のエサ用に残飯をもらいに、

スクワッターゾーンから来る、女の子の声、

ちょっとハスキーなメリー・ジョイ10歳、

メリー 「Merry」 陽気な、

ジョイ「Joy」喜び、

彼女にぴったりな名前です。


小さな卵形の面長な顔に、真っ黒い瞳、

瞳孔が見分けられないほど深い黒、

顔の左半分には、点々と紫色の痣が散っています。



スクワッターゾーンでトライシクルのサイドカーに座り、

折り紙の「鶴」を教えていると、

小さい野獣のような子供たちが、

ボクの手から折り紙を引ったくります。

ボクは怒っていいのか、辛抱強く優しく注意すべきか迷い、

そういう時に、メリー・ジョイが狼のように、

歯をむき、追っ払ってくれる、

頼りになる「番頭さん」、情けない「ボク」(笑)




メリー・ジョイが弟のジョセフ7歳を連れて、

「草むしりさせて下さい / Pag  guna  mo 」と、

家々の門へ向かい声をかけしています。


これは彼らのささやかなアルバイト、

ボクは二人を手招きして、「うちのやる?」

二人同時に、首を縦に。


もちろん、誰でも良いわけではなく、

メリー・ジョイは近所でも草むしりをしています。

そして、姉弟は良い組み合わせです。

男子同士は遊びに、女子同士はオシャベリに、

なってしまうこともありますので。


うちの前、裏を約1時間、

雑草の小山の横、メリー・ジョイとジョセフが、

仔犬のようにアルバイト代を待っていて、

相場の40ペソを渡すと、ニッコリ。

きっと、すぐそこのサリサリストアに、

スナック菓子とコーラへのダッシュでしょう(笑)



メリー・ジョイは、20ペソ紙幣2枚をポケットに押し込みながら、

「 Are  you  rich ? 」と。

別に他意はなく、「ただ、口から出た」ようです。

フィリピンへ来てから幾度となくされた質問には、

「そんなでもないよ~」とごまかしてきましたが、

メリー・ジョイの二つの黒い瞳に見つめられ、

言葉が喉に引っかかったまま。




家賃5,000ペソを払い、

190平米の敷地の借家に住む日本人が、

「リッチ」でないはずありません。


ですが、「 Yes 」とは応えられず、

やっと見つけた言葉が、

「チョコレート食べる?」

二人は歯を見せて、自然と口の両端が上がってしまいます。

フィリピンでチョコレート嫌いな人はいません(笑)





最後の「明治板チョコレート」を渡し、残りはナシ、

次回、きちんと応えられるか、

ちょっと心配です。