先輩・ベテランの知は、組織を維持・発展させる上で
必須となる沢山の要素を含んでいます。
ところがそれらの知は、
そのままの形で若手・後輩が使おうとしても
そうそう役には立たないし、
無理やり押し付けたりすれば、
組織の風土すら悪化させかねない、という話をしてきました。
それらの知は、彼ら・彼女らが生きてきた文脈の中で
ある意味”完結された”知であるがために、
今まさに実践している後輩・若手の目には、
無駄の多いものに映ったり、意味が不明なものと
なることが少なくありません。
こうした知を後輩・若手が受け取るためには、
”完結”された丸ごとの知を
細切れの形にしていく必要がある、という話もしてきました。
とはいえ、
一体どうやったら知識を細切れにすることなどできるのか。
そう疑問を持たれた方も多いでしょう。
先に述べた様に、実践者にとって有益な知の大部分は、
ベテラン・先輩がほとんど意識できていない、
あるいは特別な知識と捉えてもいないようなところに
”潜んで”います。
であれば、ベテラン・先輩たちが、実践者にとって有益な部分を
選り分けて細切れにする作業など、
できる道理がないでしょう。
つまりこの作業は、
実践的な知識ニーズを抱えている後輩・若手と
潜在的な実践知を豊富に持っている先輩・ベテランの
共同作業で進めていかなければいけません。
そして先輩・ベテランには、その共同作業が可能となるような
コミュニケーションの取り方、
いわば「関わりの技法」が求められてくる訳です。
その具体的な方法は、項を改めて詳しく説明するとして、
まずはどうやったら知が細切れになるのか、
そのイメージをかいつまんで説明します。
細切れを作る方法は大別して2つあり、
ひとつは”つかみ取り”、
そしてもうひとつは”分子結合”です。
いずれの場合も先輩=後輩の間でまずは相互作用を起こし、
それが進展する中で
後輩が”有益な”知(分解された知)をつかみ取るか、
新しい化合物(双方の分解された知が結合して)を
つくる形で先輩の知を頂く、
というのがそのしくみです。
この相互作用を起こしていく際に重要なのが”文脈”です。
相互作用は必ず後輩側(=”実践者”側)の実践の文脈の中で
起こされなければいけません。
ここがブレては、折角のやり取りが台無しになってしまうのです。
この原則を忠実に守った上で、
先輩・ベテランが様々な経験の知を開示することで、
必要な”細切れの知”のつかみ取りは可能となり、
また、有益な知が後輩たちの適切な知と”分子結合”を起こして、
活かされる知への再生が現実化されるのです。