まいど~カエルイチョウ栗

生きもの自然科学大好きドキドキ

絵本講師のくがやよいです

 

 

 

 

先の記事の続きです。

 

 

 

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『風の又三郎』

宮沢賢治/作 やぎたみこ/絵 

MIKIhouse

 

 


 

ガラスのマントをまとった

又三郎が腰かけているのは、栗の木。

 

 

 

この絵本の中で 栗の木は、

ご神木として

こちら側と あちら側を隔てる

結界のような役割をしている。

 

 

 

 

この物語はご存知の人も多いと思うけれど

一日ずつ、章だてになっていて、

又三郎が小学校にやってきた9月1日から

去って行った9月12日までのお話。

 

 

(神戸のストレージブックスさんで

この絵本を編集された

松田素子さんのお話を聞いたのも

9月12日でした)

 

 

 

 

・・・

 

 

 物語の中で

嘉助が行方不明になったとき、又三郎は

栗の木が落とす青い影の中に座って

空を仰ぎ見ながら、

 

 

 

僕は、長くここにいられなくてもいい。

正体がばれてしまっても構わないから、

どうか、どうか嘉助を助けてほしい。

 

 

 

とでも言うように

唇を強く結んだまま、無言で、風の王

(あるいは栗の木)に語りかける場面。。。

 

 

 

又三郎の周りに青い栗の実が落ちている。

 

 

 

 

賢治作品は謎が多く、研究者もたくさんいる。

でも、その謎めいたところが

人をひきつけてやまないんじゃなかろうか。

 

 

 

 

 

でも、

読み解かないといけない、とか

この絵本の解釈はこうだ、っていう

正解はない。

 

 

 

自由に読めばいい。

 

 

 

 

(…うちは又三郎が馬を怖がる場面が好き^^

「わあ又三郎馬(うま)怖(おっかな)がるじゃい。」

と悦治が云うと、

「怖くなんかないやい。」と云いながら

ポケットの手を馬づらに伸ばすけれど

馬が舌を伸ばしてべろりと出すと、

さっと顔色を変えて素早くまた手をポケットへ入れてしまうところ。

 

「わあい、又三郎

馬(うま)怖(おっかな)がるじゃい。」

とまた悦治が云うところ。)

 

 

 

 

 

 

松田さんは、裏付けが取れるまで

徹底的に

文献や資料を調べ尽くす。

いい加減なものは、世に出さない。

そのストイックさたるや、すごい。

編集者の矜持を見る思いがする。

(私の絵本学の先生、正置先生と重なるところがある)

 

 

 

 

(画家さんの持てる力を最大限に引き出そうと)

画家さんを信じて投げかける。

 

 

画家さんが呼応する。

 

 

「編集者は、画家(作家)の伴走者」

なのだと松田さんは仰っていた。

 

 

 

物語を「すきとおったたべもの」に例えた賢治と

文字には書かれていない空気感や、

気配までもを描こうとした画家のやぎさん。

 

 

(松田さんは、やぎさんの名刺を受け取った瞬間に

小さく描かれた日本の男の子を見て

「日本人の男の子を描ける数少ない画家さんだ!」と

依頼を決めたのだそう)


 

 

 

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謎多き賢治作品に

総力を挙げて挑む画家と編集者、

その画を刷り上げる職人、

装丁をするデザイナー、、、

 

 

これほどの思いを乗せて

作品を世に送り出している人たちがいること、

一冊の絵本づくりにかける情熱・・・

 

 

 

絵本というメディアが持つ力を再認識する。

 

 

 

 

・・・・・・

松田さんのお話を聞いた翌週、

宮沢賢治作品を読んでいる6年生の教室に

『風の又三郎』を持って行った。

 

 

 

図書館から借りた何十冊もの賢治作品の中で

なんだか、この絵本が

オーラを放っているように見えたのは

気のせいかな・・・

 

 

 

 

いや、きっと気のせいじゃなかったと思う。

 

 

 

 

 

だって、6年生の子がこの絵本を見て、

「きれいな絵本やなぁ…」

ってしみじみと 言っていたから。

 

 

 

 

 

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★11/13の「宮沢賢治と絵本の時間」は

『鹿踊りのはじまり』

編集者である松田素子さんから

ミロコマチコさんとの絵本制作のお話が聴けます。

右矢印【申し込みはこちら】から。

(ストレージブックスさんのサイトです)

 

★午後からは、神戸ゆかりの美術館で

ミロコマチコさんのLIVEペインティングもあります

(定員アリ)

下矢印

 

 

 

 

 

 

【 以下、教室に持って行った

賢治関連の図鑑 】

下矢印

 

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『賢治童話ビジュアル事典』

中地 文/監修 岩崎書店

 

 

賢治童話に登場する

いろいろな道具や生きもの、職業など

(例;アセチレンランプ、おいのこ、赤帽さんetc)

 

今の子どもたちには馴染みが薄いものを

写真やイラストを交えて紹介しています。

 

 

 

 

 

『宮沢賢治キーワード図鑑』 平凡社

 

 

・・・とてもとても美しい本。

(賢治愛が半端ねぇ~~って思った!)

賢治と「言葉」が好きな人におすすめ。

いろいろな作家さんが文章を書かれていて、

すごく、読み応えがあると思ったら・・・

松田素子さんが編集協力されていた。

 

というテーマで宇宙飛行士の毛利衛さんが書かれた

賢治に宛てた手紙…とても好きです)

 

 

 

 

 

『宮沢賢治の元素図鑑

 作品を彩る元素と鉱物』

桜井弘/著   豊遙秋/写真協力

化学同人 

 

 

 

これまた選書がめっちゃマニアック・・・

ですよね~(^_^;)

石好きさんにもたまらない一冊!

 

 

作品にでてくるさまざまな鉱物を知り、

その意味を紐解いていくと、

自然科学者でもあった賢治のことを

より深く知ることができるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

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