不当利得返還請求の論じ方のポイント | びょうそくで司法試験(加藤喬の司法試験対策ブログ)

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 加藤喬
 青学法→慶應院(既修)
 平成26年、3回目の受験で労働法1位・論文36位で司法試験合格
 その後、辰巳法律研究所で講師デビューを果たし、司法修習も終え、現在は、資格スクエア・BEXAにて、過去問分析・方法論を反映した基本7科目・労働法の総合講座を担当

  不当利得返還請求は、司法試験論文で一番の頻出分野です。

 

 

 

  これまでに、平成18年設問3、平成20年設問2、平成21年設問3、平成23年設問1、平成25年設問2(但し、主たる検討事項ではない)、平成26年設問2、平成27年設問1(2)(248条として)、平成28年設問2(2)で出題されています(※改正民法下では、121条の2に注意)。

 

 

 

  平成23年設問1のように転用物訴権といった論点が絡んだり、平成28年設問2(2)のように債権譲渡契約の解釈や債権者代位権という法律構成に絡めて出題されることもありますが、こうした場合でも、要件一つ一つの認定の仕方が差がつきます。

 

 

 

  そこで以下では、不当利得返還請求(703条・704条)の要件認定に関するポイントを紹介させて頂きます。 

 

 

 

  ①まず、利得・損失では、金額まで明示する必要があります。

 

  利得・損失の金額が、不当利得返還請求の認容範囲を画することになるからです。

 

  例えば、利得500万円・損失400万円であれば、請求認容額は400万円です。

 

  利得400万円・損失500万円の場合も、請求認容額は400万円です(差額100万円については、受益者が悪意であれば、不法行為に基づく損害賠償請求権により請求する余地があります(704条後段・709条))。

 

  事案によっては、普通にみれば「利得額>損失額」になりそうなところを、損失額を利得額に合わせるための工夫が求められることもあります。

 

 

 

  ②次に、利得・損失間の因果関係では、「直接の因果関係」と「社会通念上の因果関係」を区別するのが望ましいです。

 

  民法(全)(著:潮見佳男)489~493頁でも、平成28年設問2(2)に関する採点実感でも、両者が区別されています。

 

   「社会通念上の因果関係」が問題となるのは、典型的には、受益者・損失者間に、損失者の財産又は労務により直接利益を得た中間者が介在する場合です(騙取金弁済事案など)。

 

  両者を区別しないにしても、因果関係を認める理由を上手く表現することができないから、理由付けの代わりに「少なく、社会通念上の因果関係は認められる」と書くのはダメです。

 

  何の理由付けにもなっていません。

 

  「社会通念上の因果関係」は、因果関係の拡張概念であって、因果関係が認められる理由に代替するものではありません。

 

  因果関係を認める理由を上手く表現することができない場合に、理由付けの代わりに「少なく、社会通念上の因果関係は認められる」と書いてごまかす答案の大部分は、直接の因果関係が問題なく認められる事案で「社会通念上の因果関係」という表現を使っています。

 

  例えば、甲が乙に対して現金500万円を交付したという事案では、問題なく直接の因果関係が認められます。

 

  もっとも、問題なく直接の因果関係が認められるからこそ、どうして因果関係が認められるのかという説明に窮する人が多いです。

  

  上記の事案では、端的に、”乙の500万円の利得は、甲の現金500万円という甲の「財産」に由来するから、乙の利得と甲の損失との間には因果関係が認められる。”、あるいは、”乙は、甲が乙に交付した現金500万という「他人の財産・・・によって」500万円の「利益を受け…た」のだから、乙の利得と甲の損失との間には因果関係が認められる。” とだけ書けば足ります。

 

  「直接の因果関係」の事案では、転用物訴権の事案を除き、わざわざ「直接の因果関係」と表現せず、単に「因果関係」と表現すれば足りますが、「社会通念上の因果関係」の肯否が問題となる事案では、「社会通念上の因果関係」という表現を用いたほうが良いです。

 

 

 

  ③「法律上の原因」の不存在については、転用物訴権のような論点が絡む事案であったり、事実関係が複雑・特殊な事案でない限り、受験生間であまり差がつかないと思います。

 

 

 

  なお、「無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者」の返還義務については、改正民法121条の2が703条・704条に優先して適用されることに注意しましょう。

 

 

 

  参考にして頂けますと幸いです。

 

 

 

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