基礎講座の段階における、判例百選の使い方 | びょうそくで司法試験(加藤喬の司法試験対策ブログ)

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 加藤喬
 青学法→慶應院(既修)
 平成26年、3回目の受験で労働法1位・論文36位で司法試験合格
 その後、辰巳法律研究所で講師デビューを果たし、司法修習も終え、現在は、資格スクエア・BEXAにて、過去問分析・方法論を反映した基本7科目・労働法の総合講座を担当

  予備校の基礎講座を受講している段階で判例百選までやるべきかについて、ご質問を頂くことがあります。

 

 

  私は、少なくとも、予備校の基礎講座を受講している段階では、判例百選を網羅的に読み込む必要はないと考えています。

 

 

  基礎講座を受講している段階では、主として、以下の4点を最優先に考えるべきです。

 

 

  ①浅く広く勉強することで、出来るだけで早く、各科目の全体像を把握する

 

  ②条文・制度を理解・記憶する

 

  ③論点について、判例・通説がどういった立場なのかをざっくりと理解・記憶する

 

  ④論点がどういった事案で問題になるのかを知る

 

 

  刑法の因果関係を例に挙げるなら、

 

  犯罪の成立要件は、構成要件該当性(客観的構成要件・主観的構成要件該当性)、違法性阻却事由がないこと、責任阻却事由がないことに分類され、既遂犯の客観的構成要件性が認められるためには、少なくとも実行行為・構成要件的結果・両者間の因果関係が必要である(①)、

 

  因果関係は、条件関係と法的因果関係に分類され、法的因果関係は、偶発的な結果を排除して適正な帰責範囲を確定するための要件である(②)、

 

  実行行為と結果との間に介在事情(被害者の特殊事情と行為後の介在事情)が存在している事案では、因果関係が論点になる(④)、

 

  因果関係の有無は、(ⅰ)行為の危険性が結果へと現実化したかで判断し、(ⅱ)危険の現実化の判断では、行為自体の危険性(行為時に存在した全事情を基礎に客観的に判断される)のほか、介在事情の異常性と結果への寄与度を考慮する(③)、

 

  ということまでを、次回の授業(おそらく、構成要件的故意に関する授業)を視聴するまでに理解・記憶しておけば足りると思います。

 

 

  最終的には、危険の現実化説を使った正しい当てはめの仕方(より抽象的に言うならば、規範の正しい使い方)を身につけるために、直接型(典型が大阪南港事件)と間接型(高速道路侵入事件型とトランク監禁致死事件型に分類される)ごとの危険の現実化説の使い方と、どういった事案で折衷的相当因果関係説と危険の現実化説の対立が顕在化するのかについても学習する必要がありますが、後回しで構わないと思います。

 

 

  まずは、予備校テキストに書いてあることを、浅く広くで構わないので、使えるようになることです。

 

 

  論点ごとの理解を深めるのは、その後です。

 

 

  そして、論点のうち、重要論点については、予備校の基礎講座に組み込まれている短文事例問題、市販演習書、又は過去問を使った演習の段階で、規範の正しい使い方を学ぶことができるはずです。

 

 

  判例百選を使った学習による獲得目標としては、(1)論点の理解を深めるために、論証の理由付けや規範の正しい適用の仕方などを学ぶことと、(2)論点がどういった事案で問題になるのかを知ることが挙げられると思われます。

 

 

  (2)は、予備校問題、市販演習書又は過去問を使った演習を通じて身につけることができますから、主たる獲得目標は(1)です。

 

 

  (1)のうち、重要論点における規範の正しい使い方は、演習を通じて身につけることができるはずです。

 

 

  そうすると、残るは、論証の理由付けだけです。

 

 

  現行の予備試験・司法試験の採点では、ごく一部の論点を除き、論証の理由付けの丁寧さ・説得力は、さほど重視されていません。

 

 

  しかも、論証の理由付けが重視される論点については、基礎講座や演習を通じて、理由付けに関する深い理解を身につけることができることもあります。

 

 

  そうすると、論証の理由付けに関する理解を深めるために判例百選を読み込む必要性も低いです。

 

 

  加えて、予備試験・司法試験の上位合格者ですら、判例百選の解説レベルのことを満遍なく理解・記憶している人は、ほとんどいないと思います。

 

 

  判例百選の解説レベルのことを満遍なく理解・記憶することは、試験対策としてオーバースペックであるとともに、やろうとしてもやり切れないからです。

 

 

  予備校の基礎講座を受講しているのであれば、判例百選を使う場面は以下の3つに絞られると思います。

 

(1)予備校テキストだけではどうしても理解できない場合に、辞書的に参照する

 ➡但し、著名な基本書・演習書のほうが役立つことが多い

 

(2)予備校テキストだけでは、事案と論点の対応関係が分からない場合に、事案と論点の対応関係を確認するために辞書的に参照する

 ➡但し、大部分は予備校問題・演習書・過去問で確認できるはず

 

(3)論文対策として押さえておくべき判例をピックアップする際に、判例

百選に掲載されているかどうかを一応の目安にする

 ➡但し、予備校のランク付けのほうが参考になることが多い

 

 

  判例百選に限ったことではありませんが、基本書・解説書・演習書・予備校講座を使うかを判断する際には、以下の過程を経ることをお薦めいたします。

 

(ⅰ)自分の現状と目標との距離を把握したうえで、何がどれだけ足りないのかを確認する

 

(ⅱ)使うかどうかを検討している基本書・解説書・演習書・予備校講座の主たる学習効果を確認する

 

(ⅲ)(ⅱ)と(ⅰ)を比較して、(ⅱ)を使うことで(ⅰ)を補うことができるのかを確認する

 

(ⅳ)(ⅱ)のほかに、より効率的に(ⅰ)を補うことができる方法がないかも確認する

 

(ⅴ)(ⅱ)を使うという判断に至った場合には、使い方・使う範囲まで考える

 

 

  参考にして頂けますと幸いです。

 

 

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