改正民法下における、特定物売買の売主の保存義務と引渡義務の関係 | びょうそくで司法試験(加藤喬の司法試験対策ブログ)

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 加藤喬
 青学法→慶應院(既修)
 平成26年、3回目の受験で労働法1位・論文36位で司法試験合格
 その後、辰巳法律研究所で講師デビューを果たし、司法修習も終え、現在は、資格スクエア・BEXAにて、過去問分析・方法論を反映した基本7科目・労働法の総合講座を担当

  改正民法の難しさの一つとして、条文相互の関係性を挙げることができます。

 

 

 

  新121条の2と現703条

 

 

   新400条と新483条

 

 

   新400条と新561条

 

 

   新424条と新424条の2~4(前者の要件がどこまで妥当するか)

 

 

   新413条の2第2項と新567条2項

 

 

   新536条と新567条の関係などです。

 

 

 

   本記事では、改正民法下における、特定物売買の売主の保存義務(新400条)と引渡義務(555条、新562条1項参照)の関係について取り上げます。

 

 

 

   特定物債権における債務者の保存義務は、契約から「引渡し」までの間における債務者による特定物の保存態様を規律するものです。

 

 

 

   例えば、特定物売買(555条)の売主が引渡しまでの間に特定物の保存のために必要な措置を講じていない場合(善良な管理者の注意をもって特定物を保存することを怠っている場合)、買主は、売主に対して、①売買契約に基づく履行請求権の行使として、引渡しまでの間、特定物の保存のために必要な措置を講じるように請求することができます。

 

 

 

   売主がこれに応じないときは、②給付訴訟を提起して債務名義を取得したうえで履行の強制(新414条)をすることができますし、要件を満たせば、③保存義務違反を理由とする損害賠償請求(新415条)や契約の解除(新541条以下)をすることもできます。

 

 

 

   売主の保存義務違反を原因として特定物の品質に契約不適合(改正前民法下では、主観的「瑕疵」を意味する)が生じ、品質が契約に適合しない特定物が引き渡されるに至ったときには、要件を満たせば、④保存義務違反を理由とする損害賠償請求(新415条)や契約の解除(新541条以下)をすることができます。

 

 

   なお、保存義務は、契約から「引渡し」までの間、売主に課される義務であるものの、保存義務違反を理由とする債務不履行責任は、「引渡し」後であっても追及することができます。

 

 

   上記の点は、改正前民法と改正民法で共通します。

 

 

 

   改正前民法下では、特定物ドグマ肯定説からは、瑕疵ある特定物が引き渡された場合には、引渡義務違反を理由とする債務不履行責任を追及することができません(旧483条参照)。

 

 

 

   そこで、買主としては、契約締結から引渡しまでの間における特定物の保存態様に着目して、売主の保存義務違反により特定物の瑕疵が生じたとして、④保存義務違反を理由とする損害賠償請求(旧415条)や契約の解除(旧541条等)をすることになります。

 

 

 

   改正民法下では、特定物売買の売主も売買契約に基づく財産権移転債務の一内容である引渡義務として契約に適合する品質の特定物を引き渡す義務を負うということが明文化されることで、契約責任説が採用されるに至りました(新562条1項参照)

 

 

 

   そのため、引き渡された特定物に契約不適合がある場合、売主には、保存態様如何によっては保存義務(新400条)違反が認められるほか、保存態様を問わず引渡義務(555条、新562条1項参照)違反も認めれられます。

 

 

 

   一般的には、手段債務である保存義務よりも、結果債務である引渡義務のほうが、不履行に関する立証がし易いです。

 

 

 

   そのため、売主としては、保存義務違反を原因として特定物の契約不適合が生じた場合であっても、引渡義務違反を理由とする債務不履行責任を追及するのが通常です。

 

 

 

   そうすると、少なくとも売買型の契約では、「引渡し後」に保存義務違反を問題とするべき事案は稀であるといえます。

 

 

 

   改正民法を学習する際には、条文相互の関係も意識するようにしましょう。

 

 

   なお、改正民法版の総まくり2020民法を受講してくださっている方々は、改正民法の学習は、条文相互の関係性も含めて、総まくり2020民法の講義・テキストに委ねて頂ければと思います。

 

 

 

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