自分の時間と人生の価値を考える 年収1000万円でも時給2000円未満になることもあります | びょうそくで司法試験(加藤喬の司法試験対策ブログ)

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 加藤喬
 青学法→慶應院(既修)
 平成26年、3回目の受験で労働法1位・論文36位で司法試験合格
 その後、辰巳法律研究所で講師デビューを果たし、司法修習も終え、現在は、資格スクエア・BEXAにて、過去問分析・方法論を反映した基本7科目・労働法の総合講座を担当

  事務所や働き方を選択する際の参考にして頂きたいという思いから、本記事を書かせて頂きました。

 

 

  表面的な金額の多寡だけではなく、自分の時間と人生の価値、経験、やり甲斐など、様々な要素考慮して慎重な選択をして頂きたいと思います。

 

 

  弁護士=高給取りというイメージを持たれがちですが、働き方によっては時給2,000円を切ることもあります。

 

 

  例えば、平日:10時~27時勤務、土日:半日勤務、事業所得、総額支給1,200万円という採用条件を見ると、激務ではあるものの、サラリーマンの同期よりも条件は良い・高給取りだと錯覚してしまう人がいるかもしれません。

 

 

  しかし、給与・報酬といったお金の多寡を判断する際には、総額のみならず、①税引のかかり方、②1時間当たりの金額、③給与所得者との違いなどを考慮する必要があります。

 

 

  上記の例だと、「年1,200万円」は事業所得ですから、確定申告書の「収入金額等」の総額は「1,200万円」となります。

 

  

  この「1,200万円」は弁護士個人の「売上げ」であり、「課税所得」ではありません。

 

 

  課税所得は、弁護士会費その他の経費、年金・国保などを控除した金額ですから、高くても1,000万円くらいでしょうか。

 

 

  そこで以下では、「平日:10時~27時勤務、土日:半日勤務、事業所得、課税所得1,000万円」という条件について、①税引のかかり方、②1時間当たりの金額、③給与所得者との違いという観点から評価したいと思います。

 

 

  まず、①税金のかかり方からです。

 

 

  個人事業主ですから、税金だけで以下の(ⅰ)~(ⅲ)を合計した3,264,000円が控除されます(※細かい計算は度外視しております。)。

 

(ⅰ)所得税1,764,400円 (10,000,000×33%-1,536,000)

(ⅱ)地方税1,000,000円 (10,000,000×10%)

(ⅲ)事業税  500,000円 (10,000,000×5%)

 

 

  3年目からは、(ⅳ)消費税の負担もありますから、中間申告分も含めると、1,500,000円くらい課税所得から控除されます。

 

 

  そうすると、税金(ⅰ)~(ⅳ)の税金を控除した後の金額は500万円ちょっとです。

 

 

  次に、②1時間当たりの金額です。

 

 

  平日(年244日)10時~27時勤務では実働15時間、土日(年121日)半日勤務では実働6時間と仮定します。

 

 

  平日の総実働時間3,600時間、土日の総実働時間726時間、年間総労働時間4,386時間です。

 

 

  単純計算すると、1時間当たりの金額は、課税所得基準で約2,279円、手取り基準で約1,140円です。

 

 

  労働基準法の適用を受ける「労働者」であれば、法定時間外労働・法定休日労働分については、割増賃金が発生します。

 

 

  平日の実労働時間15時間のうち、7時間には少なくとも25%、賃金が割り増しされます。

 

 

  月60時間を超える時間外労働には50%、賃金が割り増しされます。

 

 

  時間外労働と深夜労働が重複する24時~27時の労働のうち(24時までに2時間休憩していると仮定します)、月60時間以内の部分には50%、月60時間超の部分には75%、賃金が割り増しされます。

 

 

  土日勤務121日のうち、約60日分には35%、賃金が割り増しされます。

 

 

  日曜日を法定休日と仮定した場合、土曜日勤務のうち24時~27時の労働および日曜日勤務のうち22時~24時の労働には60%、賃金が割り増しされます。

 

 

  上記の計算を前提にすると、仮に労働基準法上の「労働者」であった場合、「通常の労働時間の賃金」は、課税所得基準で千数百円となり、手取り基準で1,000円を切ります。

 

 

  そして、③給与所得者との違いも重要です。

 

 

  給与所得者には、(ⅱ)事業税と(ⅲ)消費税の負担はありません。

 

 

  さらに、(ⅰ)所得税を計算する際に、2,200,000円の給与所得控除がなされます。

 

 

  社会保険料は高いものの、半分は会社負担ですし、優良企業であれば退職金や家賃補助もあります。

 

 

  しかも、年間の総実労働時間も上記条件に比べてだいぶ短いはずです。高プロ対象労働者でさえも、そうです。

 

 

  個人事業主が脱税に近い私費の経費計上をそれなりの規模でやらない限り、給与所得者の課税所得1,000万円>>個人事業主の課税所得1,000万円、だと思います。

 

 

  これから事務所選びをする方々には、参考にして頂きたいと思います。

 

 

  それから、お金も大事ですが、中長期的に弁護士人生を考えた場合には、経験、人間関係といった他の事情も考慮する必要があります。

 

 

  さらに、売上げが数千万~1億に近くなると独立を考える方がいますが、独立を考える際には、自分の売上がどれだけ事務局や事務所の資金・信用に支えられているか、人を雇うのにどれだけの費用・責任が伴うか、運転資金ショート時の対応(親族の援助の可否等)なども考慮するとともに、成功例だけでなく失敗例にも目を向ける必要があります。

 

 

  与えられた仕事をこなすことと、自分の信用で仕事を頂くこととの間には、埋めることのできない大きな違いがあります。

 

 

  短期的に利益を上げることは難しくありませんが、信用を維持しながら5年、10年、数十年と中長期的に自分で利益を上げ続けることは簡単なことではありません。

 

 

  長く続いていることには、それなりの理由があります。

 

 

  なお、本記事は、Twitterで話題になっていた先生を批判する趣旨では全くありません。

 

 

  時給2,000円前後の経営者弁護士・勤務弁護士も少なくないと思います。

 

 

  時給1,000前後で新人弁護士を使い倒そうとする悪質極まりない事務所もあります。

 

 

  経験を積むなどの理由から、短期集中で数年頑張るという選択もありかもしれません。

 

 

  私自身、予備校講師になってから、2年間くらいは、寝る間もないくらい忙しかったです。

 

  

  寝付かないように、敢えて床の上で寝る日も多かったです。

 

 

  今も、丸一日休むことができるのは、年に数日くらいです。

 

  

  それでも、良いものを作り、司法試験業界に残したいという一心でやっているので、忙しさや待遇に不満を持ったことが一度もありません。

 

 

  時間をかけて丁寧にやった分だけ、良い作品に近づきますし、翌年の業務負担がやや軽減されます。

 

 

  こういう選択もありなんです。 

 

 

  ただ、お金だけを基準にすると、見た目ほど良い条件ではないということです。

 

 

  時間の安売りをする癖が染みつく危険や心身を壊す危険もありますから、事務所や働き方を選択をする際には、お金以外の要素も考慮して頂きたいと思います。

 

 

  そして、これから弁護士になる方々や弁護士を目指す方々にとって、もっと魅力のある業界になってほしいとも思っています。

 

  

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