私が夫と出会ったのは、半世紀近くなるだろうか。
半世紀は大袈裟でも、40年は優に経つ。

私達は、まだ十代だった。
彼は19、私は18歳。

デートと言えば、新宿、渋谷、原宿、池袋と都心が多かった。
代々木公園にもよく行った。

秋も深まった土曜日の午後。
二人して代々木公園を散策し、芝生にシートを敷き、長いこと座っておしゃべりしていた。
夕方になると、足元が冷えてきた。
元々冷え性の私は、冷えるなと思いながら、我慢してしまった。

とうとう、膝周りが痛くなった。
「足が痛くなったから、もう帰りたい」と言って、立ち上がろうとしたら、膝だけでなく腰も痛くて、よろけてしまった。
彼の肩を借りながら、やっとの思いで、代々木公園駅まで歩いて行った。

その後、彼と会った時のことだ。
「大丈夫だった?」と聞かれた。
私の足腰を心配してくれているのかなと思ったら、「帰りが遅くなったから、親に何か言われなかった?大丈夫だった?」
あれ、私の足腰を気にかけてくれていたんじゃなかったんだ。なんだ、がっかり。
あんなに痛かったのに、この人は何を心配しているのだろう。

確かに、帰宅は遅くはなったけど、私は親から何も言われてないよ。痛かった足腰を心配してくれたんじゃないんだ。
そう思ったが、なぜか本心を言うことができなかった。

彼は、こう思ったのだそうだ。
帰りが遅くなったことが、自分のせいにされたくない。

そう、既にモラハラ気質だったのだ。
今ならわかるが、世間知らずのただの女の子だった私は、彼が言っていることを理解できなかった。

ただ、彼が気の毒と思うのは、当時、帰宅が遅くなると、母親から「夜這い」とか「夜鷹」と罵倒されていたことだ。
これは、後々聞いたことだが、だからと言って、彼のモラハラの言い訳にはならない。