エルビス(バズ・ラーマン監督作品) | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

 

監督・脚本・原案 バズ・ラーマン

脚本・原案 ジェレミー・ドネル 

脚本 クレイグ・ピアース、サム・ブロメル

音楽 エリオット・ウィーラー

撮影 マンディ・ウォーカー

編集 マット・ヴィラ、ジョナサン・レドモンド

出演 オースティン・バトラー、トム・ハンクス、オリヴィア・デヨング

2022年度 製作国 アメリカ 上映時間 2時間39分

 

エルビス・プレスリーに対しては、マリリン・モンローと同じアメリカン・ドリームの

俗物的なイメージしか持っていなかったのですが、ジム・クロウ制度(黒人の一般公共

施設の利用を禁止、制限した分離政策)が行使されていた時代に、革新的なリズム・アンド・

ブルースとカントリー・アンド・ウェスタンを融合させた音楽スタイルやパフォーマンス

(A WHITE BOY WITH BLACK HIPS)が黒人音楽への傾倒や公序良俗に反すると

保守層や宗教団体から糾弾されて監視委員会が設けられる等反骨精神を持った真の

ロックンローラだったことを本作で知りました。

映画のラストに挿入されているエルビスの最後のコンサートとなったインディアナポリス

「マーケット・スクエア・アリーナ」で、処方薬の過剰摂取やストレスによる過食で

体が悲鳴を上げている中、余力を振り絞って汗まみれになりながら歌う実写映像を見ると、

歌い続けることでしか存在を証明することができない愛に飢えた孤独な男の哀愁が

漂っていて、カリスマは常に身を削って生きる運命にあることを、改めて考えさせらた

作品でした。

西条八十が作詞した「歌を忘れたカナリア」という有名な童謡がありますが、

強欲マネージャーの用意した籠の中でしか歌うことが出来なかったエルビスは、

そんなカナリアに置き換えられる存在だったのではないでしょうか。

 

「歌を忘れたカナリア」

 

歌を忘れたカナリヤは
後ろのお山に棄てましょか
いえいえそれはなりませぬ

 

歌を忘れたカナリヤは
背戸の小藪に埋け(埋め)ましょか
いえいえそれもなりませぬ

 

歌を忘れたカナリヤは
柳の鞭でぶちましょか
いえいえそれは可哀相

 

歌を忘れたカナリヤは
象牙の舟に 銀の櫂
月夜の海に 浮かべれば
忘れた歌を 思い出す
 

 

 

 

 


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