監督 ジョージ・C・ウルフ
原作 オーガスト・ウィルソン
出演 ヴィオラ・デイヴィス、チャドウィック・ボーズマン
2020年度 製作国 アメリカ 上映時間 1時間34分
1862年に、リンカーンによって黒人奴隷解放が宣告されましたが、アフリカ系アメリカ人の
地位や生活は改善されず、その痛みを語る手段としてブルースが誕生します。
本作は、20世紀初めに南部でブルースの女王と讃えられていたマ・レイニーが、
レコーディングのために訪れたシカゴのスタジオを舞台に、ブルースに絶望ではなく抵抗の
メッセージを込めて、自分のルール(ブルースはアフリカ系アメリカ人の魂の叫び)を替えずに、権力を持つ白人と威厳を持って闘った彼女の生き様と、才能とやる気さえあれば夢が
叶うと信じて、白人の価値観に合わせたブルースを目指した若いバンドマンのレヴィ―の
哀しい過去と、彼の前に立ちはだかる南部と変わらない人種差別の壁を、重ね合わせて
描いています。
レヴィ―を演じたのは、「ブラック・パンサー」で主役を演じたチャドウィック・ボーズマンで、本作の演技が高く評価されて、本年度のアカデミー賞主演男優賞の最有力候補に名前が
挙げられていますが、撮影前から続いていた癌との闘いに勝てずに、本作が遺作となって
います。
原作者は、ドイツ人の父親と黒人の母親の間に生まれ、幼少期を黒人のスラム街で育った
劇作家のオーガスト・ウィルソン(2005年に60歳で他界)で、「社会における今の私たちは、
過去に起きた出来事の結果だ。だが皆は2週間前の事も忘れる。自分自身を知るためには、
歴史を知る必要がある。」と、アフリカ系アメリカ人の視点で、アメリカの歴史を見直す
作品を数多く発表して、2度のピューリツアー賞を受賞しています。
出典:ドキュメンタリー映画「マ・レイニーのブラックボトムが映画になるまで」、
竹島達也「オーガスト・ウィルソンーアフリカ系アメリカ人の巨匠
マ・レイニーが、音楽収録の休憩中に、バンドマンにブルースについて語る場面から
「白人にブルースは判らない。成り立ちを知らないからね。
ブルースは人生を語る手段だ。楽しむためじゃなく、人生を理解するためにある。
朝起きる力をくれるし、一人じゃないと教えてくれる。
この世界はブルースによって足された何かがある。
ブルースなしじゃ世界は空っぽ。その空っぽな世界を埋めたいんだ。」
※日本語字幕のまま抜粋