コレクター | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


監督 ウィリアム・ワイラー

原作 ジョン・ファウルズ
脚本 スタンリー・マン、ジョン・コーン
音楽 モーリス・ジャール

撮影 ロバート・サーティース、ロバート・クラスカー

出演 テレンス・スタンプ、サマンサ・エッガー

1965年 イギリス/アメリカ


本作をはじめて観たのは、私が子供の頃住んでいた町にあった
洋物のポルノ映画を専門に上映していた場末の2番館でした。
当時、人気絶大だったシャロン・ケリーの映画をメインに
3本立てで組まれていた中に本作が混ざっていて、
まさか、あの『ベンハー』や『ローマの休日』を監督した
ウィリアム・ワイラーの作品だとは思いもよらずに観たものですから、
いつまで経っても女性の裸が出てこないのでおかしいと思いつつも、
ストーリーの面白さに引き込まれて、見終わった後で、
灰の中からダイヤモンドを見つけた気分になったことを覚えています。
劇場の支配人は、『コレクター』のタイトルから、ポルノ映画だと
思って上映したのでしょうが、劇場にいた観客誰一人として、
文句を言って騒ぎ出す人はいませんでした。

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

映画は、蝶の標本作りを趣味にしている妄想性人格障害の
銀行員が、思いを寄せる美大に通う女性を蝶を採取するように
誘拐して、くじで手に入れた大金で買った郊外の一軒家に
監禁して飼育しようとする話です。
舞台劇のように、テレンス・スタンプ(銀行員)とサマンサ・エッガー
(美大生)二人だけで展開されるサスペンス劇ですが、
予想のつかない展開と心理描写に引き込まれて、最後まで
緊張しっぱなしの作品でした。
女性を監禁すると言っても、レイプしたり暴力を振るったりして
怖がらせる猟奇的な最近の作品と違って、話の面白さで
見せる心理劇ですので、刺激の強い映画を望まれる方には
物足りないかもしれません。
主役のテレンス・スタンプは、本作の倒錯的な青年がはまり役になって
しまい、フェリーニの『悪魔の首飾り』やパゾリーニの『テオレマ』
出演以後、実生活でも精神を病んで、一時ドラッグ中毒になっていたようです。

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

※『博士の異常な愛情』『イージーライダー』などの脚本を手がけた
テリー・サザーンがゴーストライターとして参加しています。


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