私は友だちの家に転がり込んだ。なにをやっているのよまったく、と呆れられた。

もう駄目だと思ったから出てきてしまった。本当に私は何をしているんだろうと、我ながら情けない。

あの人のベッドでこれ以上は眠れない。そう思ったから出てきてしまった。かといって夫が住んでいる家に今更戻るのもどうだろうかと思った。
何も望まない、むしろ欲しいものならなんでもあげる、お金も置いていく、ただ私のこの身一つにある感情だけ。
これ一つだけはどうしてもあなたに否定されたくないのよ

そんな馬鹿な事を言って後にしてしまった、未だに籍もそのままの(私たちは同じナマエだ。)、そんな家に戻れる筈もなかった。

あんたこれからどうするのよ。と友だちは言う。
取り合えず、アパートを借りるだけの資金が貯まるまで置いてください、と私は両手を合わせた。
全くもう、掃除と洗濯と料理はあんたがしな。
と怒りながらも、友だちは押し入れから布団を出してきて、これ使いなよと言ってくれる。私は安堵のあまり口の中から今までの哀しみが残らず出ていきそうになってしまった。
でもそうなったらきっとこの、頼れる友人を困らせてしまいそうで、我慢した。

あの人の部屋のなかで、
ベッドだけが私を拒んでいた。私はあの人と一緒にいてどんな夜も安心して眠れたことは無かった。

誰のものなのか何処からの由来なのか、得たいの知れない悪意を紡いで織り上げたようなあの人のおぞましいシーツ。
私は平然として眠っているあの人の穏やかな横顔を眺めたまま、
寝付けずに不愉快な夜、なす統べなく一人だった。

あのシーツ。どんなにあの人に望まれても決して私を受け入れなかったあの陰惨な寝床。
今夜からはもうあそこで眠らなくてもいい。
そう思ったら、安堵で崩れ落ちてしまいそうな体を私は友だちの布団にしがみついて、耐えた。