実在の人物をモデルに、主役を造形した青春映画です。

高校3年の主人公チュ・スインは、高校野球部の紅一点で速球投手。韓国で20年ぶりの女子選手で周囲の注目を集めていた。しかし、待ちに待ったプロ球団に指名されることはなく、挫折感を味わう。顧問は「趣味でやったらどうか」と勧めるが、本人は「留年してでも」と真剣。

しかし、スインの家にはそんな余裕は無い。野球部の顧問が就職指導の業務に忙しくなったため、新コーチのチェ・ジンテが野球部にやって来るが、ジンテからは練習から外されてしまう。

 

 

スインはトイレの個室を更衣室にしていたり、まだまだ男性優位の高校野球界を舞台に、ジェンダー論が展開しますが、何もこの話は女に限った話でもありません。受験戦争が激しい世界では、偏差値的なもので自分の限界を低く見積もってしまう子が多い。韓国と日本の違いはありますが、“他人に引っ張られずに、自分の可能性を信じる”という主人公のあり方は、そんな世界に一石を投じています。

 

第一次韓流ブームで韓国青春ものに不可欠だった、甘いロマンス要素が無いのに、登場人物達が魅力的なのも特徴です。特に、両親、顧問、友人、といった脇役達のキャラクター設定が面白く、全員一丸となって、中心に居る主人公スインを盛り上げるシナリオ。本作は第24回釜山国際映画祭正式出品を経て、2020年6月に、コロナ禍のただ中で公開されて好評を博しました。まるで、久々に野球場に行って、いい試合を見たような気分になります。これは他の韓国作品にも波及効果がありそうです。

 

 

監督・脚本 チェ・ユンテ

助監督   ソ・ジニョン

製作    オ・チョンジュン

出演  イ・ジュヨン  イ・ジュニョク   ヨム・ヘラン

(2016/韓国/105分)

 

全国公開中