1970〜80年代にかけて世界的な人気を博したエレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO、Electric Light Orchestra)のヒット曲(1981)。全英ではチャート1位となったアルバム『タイム』(Time)からシングルカットされ、日本ではアニメ『電車男』のオープニングに使用されるなど、人気のアッパー・チューンである。

 

 

 アルバム『タイム』は、タイムトラベルをテーマにしたアルバムで、この曲もそうだ。中心メンバーのジェフ・リンは、「主人公はベッドで横になりながら窓の外を見ている」と紹介している。邦題は「時へのパスポート」。"Twilight"の語源は、「太陽と月の2つの光 two lightが一つになってtwilight」ということだそうだ。"トワイライトゾーン"というと、私などは『ウルトラQ』にインスピレーションを与えたアメリカのTVシリーズを思い出すが、元々朝夕の太陽と月が空に同時に有る 不思議な時間帯のこと、ということだ。日没後のたそがれ時も"Twilight"と呼ぶが、この曲の歌詞からは"日の出前"の状況だと考えられる。

 

 ELOはこの前年、映画『ザナドゥ』のサントラの片面6曲を担当している。作詞・作曲はジェフ・リンである。映画に主演したオリビア・ニュートン=ジョンをボーカルにフィーチュアした「ザナドゥ」をはじめ、「アイム・アライブ」「オール・オーバー・ザ・ワールド」の3曲は、映画が公開された1980年に宏美さんがいち早く秋のリサイタルで取り上げており、宏美ファンにはとりわけ馴染み深いサントラであろう。

 

 この「トワイライト」は、その流れを受け継ぎ、この時代の空気感を感じることのできるゴキゲンなELOサウンドである。宏美さんは1981年のリサイタルで、第Ⅱ部2曲目にこの歌を持ってきている。皆様ご案内の通り、この年のリサイタルの第Ⅰ部は『組曲・雪物語』でしっとり、たっぷりと聴かせてくれた。Ⅱ部のオープニングは、タイム・ファイブの田井さんとのデュエットで、これまた「エンドレス・ラブ」をジックリ。

 

 というわけで、この「トワイライト」は宏美さん自身もそれまで抑えていたパワーをいっぺんに爆発させるような、エネルギッシュでリズミカルな歌唱である。トランペットの音も輝かしいアレンジ(編曲:前田憲男)に乗り、タイム・ファイブとファニー・キャストという強力なコーラスの援軍を従え、ステップを踏んで歌唱されていた記憶がある。客席ももちろん、それに呼応するように一斉に弾け出す、そんな光景を思い出す。

 

 歌い出しから、シンコペーションが連続したモチーフを繰り返してたたみかける。オリジナルよりも早めのテンポで、疾走感に溢れるスリリングな高速チューンだ。単純なメロディーのコーラス部分「♪ まぼろし それとも現実なのか」が、原詞「♪ It's either real or it's a dream/There's nothing that is in between...」の雰囲気をよく訳出している(訳詞:あまがいりゅうじ)。

 

 「♪ Twilight ほんの少しだけ〜」からは、ややゆったりしたリズムになり、宏美さんの中低音がよく響く。特に、「♪ Twilight あ"〜なたと一緒にいたいのに」の、唸るような「あ"」の声の出し方が、私にはツボである。

 

 そして、ツーコーラスが終わり、いったんバックの演奏も止まると、「♪ こんな気持ちは初めてよ」という初めて現れるテヌート気味の4分音符が若干テンポを落として歌われるところは、大変インパクトがある。これが終わると、曲はエンディングになだれ込むのである。

 

 

 このリサイタルは、テレビで放映された。だが残念ながらこの「トワイライト」はカットされていた。もうテレビ局には撮影したマスターテープは残っていないのだろうなぁ。😂

 

(1981.12.20 アルバム『岩崎宏美リサイタル’81』収録)