結婚して共に暮らした歳月は、5年を数える。

 

『子作りをさせてもらえなかった』

 

嫁が義父に言ったその台詞が、気になっていた。

確かに、その通りである。

が、僕も一応の努力はした。

 

新婚時代は週に1度程度はセックスをしていた。

よくあるカップルの頻度だと思う。

始めから嫁を受け入れなかったわけではない。

もともと淡泊だったが、男としてちゃんと営めていた。

 

性欲が低下しても、月に1度は、旅行中は、と嫁の求めには自分なりに応じたつもりだった。

 

思い描いていたような楽しい新婚生活は長くは続かず、結婚してから仕事が急に増える。

プライドとプレッシャーのはざまで、精神が擦り減るような日々を送ることになった。
 

仕事が終わって、やっと帰れる。

そういう思いにはならなかった。

嫁の待つ家に帰る足取りが重かった。

 

それは、嫁が僕とのセックスを待っているからだ。

僕の手に、腕に、抱かれることを期待しながら、どんなに遅くなっても起きていたからだ。

でも僕は、激務でセックスが出来なかった。

嫁が起きて待っていることが、負担となった。

 

早く帰って話がしたい。

会いたい。

そんな想いが消えてしまった。

 

それからは、隣で寄り添って眠ってほしいとずっと願っていた。

静かに、手を繋いで。

そうすると、仕事で疲れて緊張している体が、落ち着くからだ。

ベッドに体を預ける時間が、重力から解放される時間が、僕は少しでも長く欲しい。

 

『一緒に寝てくれるだけでいい』

勇気を出して言った。

 

『隣にいたら、したくなる』

それに、子供も……。

 

いつも2人のベクトルは正反対を向いていた。

 

いつしか、拒否する側と、拒否される側という構図が出来上がる。

 

拒否される側の、あきらめと怒り、何故?という疑問に、僕は震える。

 

拒否された側が、拒否する側に、優しく出来るだろうか。

自分を拒否したパートナーを。
自分を受け入れなかったパートナーを。

人間は、欲しいものを与えてくれたり自分の問題を解決してくれた人間には、優しく接することは出来る。
だが、自分が拒否された、という事実を受け入れ、拒否する人間と向き合うことが出来る人間がいるのだろうか。

レスられる側は、パートナーに、抱きたい抱かれたいという性欲を抱えている。

でも、パートナーは受け止めてくれない。

何故、拒否されたのかわからず、苛立ち、怒り、心に鬱積したものが溜まっていく。
 

パートナーの性欲が、いつ戻るのかも、わからない。

いつ戻るかわかない僕を、戻るまで待ち続けることができるのか。
性欲を自分の中に抱えたまま。

満たされない性欲が全身を駆け巡るのに、それに蓋をして、パートナーを待てるのか。
 

レスる側は『今夜は?』と言われると萎縮してしまう。


セックスのことには決して触れず、相手の性欲が戻るまで、待ち続けてくれる人間がいるのだろうか。

そんな聖人君子がいるというなら、詭弁だと思う。

 

今の嫁を、そのまま受け入れてくれる別の男性と人生を歩んだ方が、結果的には幸せだと考えて離婚届を書いた。