進化する企業のしくみ (PHPビジネス新書 40)

2007
PHP研究所
鈴木 貴博, 宇治 則孝


出版社/著者からの内容紹介
ネットで一体化した社会は、企業にとってまさに「弱肉強食」の世界。
生き残りをかけて、進化し続ける企業とはどのようなしくみをもつのか。
本書は5つの潮流を読み解く----
(1)業界を超える異業種格闘技競争、
(2)インフラの巨大化と劇的なコスト革命、
(3)消費者主権、カスタマーのメディア化、
(4)企業間のあいのりとマッシュアップ、
(5)終身雇用の崩壊にともなう新たな集合知
----これらの激流に適応した企業だけが生存を許される。
あなたの会社はどうだろうか。

[書評例1]

現代の企業環境は「異業種格闘技競争」であると著者は唱えている。
・異なる事業構造をもつ企業が、
・従来とは異なるルールで、
・同じ顧客ないし市場を、
奪い合いながらどちらが最強かを争う競争である、と。

それは、
・日本経済が成熟化
・ITが進展
・競争がグローバル化
という3つの大波が同時に押し寄せてきているからだという。

この「異業種格闘技競争」は、企業の存在価値が「情報流」にあるのか、物理的な生産、構築、輸送等にあるのかによって起きるかどうかが異なると言っている。

そして、生き残るためにはパラダイムシフトが起きていることを認識し、
・自社のビジネスをバリューチェーンで捉え、
・攻撃を受ける脅威とビジネスチャンスを把握し、
・ビジネスモデル(顧客への価値提案、儲けの仕組み、競争優位性)を正しく理解し、
 必要に応じて再構築する
ことが必要だと説いている。特に「誰に」「何を」「どのように」提供するかという価値提案が重要であり、それを競合と「どう戦う」のかまで落とし込むことだと。

本書では、この問題認識と処方箋に従い、Web2.0が企業にどのようなパラダイムシフトを強いるのかを解説している。
・コスト革命
・SOA
・CGM
・マッシュアップ
・SNS


興味深かったのは、チープ革命での一節。

実はおきていることは、製品を提供できるプレイヤーの数が技術の飛躍的向上と巨額な投資によって淘汰され、メーカーの数が急送区に集約化されていることに他ならない。(中略)コスト革命とは、とても高額な投資が引き金になって、多数の競争相手が投資に耐えきれずにゲームを降りていくプロセスの中で成り立っているのである。


数千億円規模の設備投資、開発費2兆円のOS、年間1兆円の開発投資により生まれるネットサービス。「コスト革命の実体はとても高価なものなのである」というのがなんとも面白い。その投資額が巨大化したために競争優位性を自社で囲うのではなく、他社にも貸し出して、割り勘要員を増やそうという戦略を採る動きがあるというのも新しい視点だった。マッシュアップは、他の企業が提供するAPIを活用してすぐにサービスが構築できることをメリットに謳われることが多いが、それではU/I競争にしかならないし、決定的な競争優位性に成りがたい。だからAPIを提供する側、つまり膨大で利用ニーズのあるデータを保有している企業こそ、Web2.0時代の覇者になると考えている。その目的から落とし込んでくるのではなく、顧客に価値を提供しようと考えていくことで、巨大な開発投資が必要となり、採算を採るために他社への貸し出しをビジネスモデルに含めるという思考プロセスの方がしっくりきた。

[書評例2]

ITの進化によって引き起こされる、新しいビジネス・モデル、従来の業界を超えた競争環境の現実、巨大開発投資とSOA, SaaSを通じた新しいアライアンスや相乗り、オープン化による自社プラットフォームのデファクト・スタンダード化或いは社会基盤化、集合知の活用の必然等々を、分かり易く描いている。
[...]

また、本書の最後の部分でWeb 2.0的な流れがナレッジ・マネジメントや集合知に及ぼす影響を述べているが、その視点は有効な顧客対応という部分が強調されているように感じるが、更に、どうやって全社員の知を最大限に引き出して「経営管理そのもののイノベーション」に進化させていくのかを論じた本としてはGary Hamel著”The Future of Management”(現在翻訳中らしい)が参考になる。



進化する企業のしくみ (PHPビジネス新書 40)