先週は音楽のことでコンピューターに振り回された1週間でした。

皆さんのブログも読めず、自分のブログも書けない…あと1週間続きそうです。



Intel MacからAppleシリコン搭載のMacBookAir M2で音楽制作をしようとしたら、

不具合が出て対処の仕方がわからなくなりました。

私が音楽事務所などに所属していたら、いつでもスタッフにサポートしてもらえるかもしれませんが、

1人でやっているので、こんな時誰に聞いたらいいのか?


私の音楽仲間は、もうすでに巨匠。こんなことで手取り足取り教えてもらうわけにはいきません。

それでネットで誰かいないかと検索してみました。


今やいろんな分野での先生が登録されているサイトがありまして、

私は、DTMの先生の中から、サウンドエンジニア歴40年のベテランを見つけました。

昔一緒に仕事したような記憶もあって

その方なら間違いなく私の質問に答えてくれると思ったからです。

と同時に、なんでこんなベテランのエンジニアさんが時給2,000円で先生をしているの?

という疑問も出てきました。(単価は自己申告ですが。)

私が知っている一般的なエンジニアの料金は1時間で2〜3万円ですから。


DTM授業はZoomで行われました。


エンジニアの先生は私の機材と質問内容で、私がプロの音楽家だと思ったようで、

お互いにこんなサイトで出会うなんて縁ですね〜という会話から始まって…

現在の音楽業界の実情の話で盛り上がってしまいました。


特に熱く語り合ったのは、


音楽のレベル低下=日本の音楽の危機について


40年も音楽業界で仕事をしていると、録音機材や音楽機材の進化が

どのように音楽に変化を起こしてきたかを目にして来ました。


〜録音現場の変遷〜

テープの録音方式が2ch、4ch、8、16、24、48、96と増えていって

ドラムマシンやシンセ、シーケンサーが信号でレコーダーと同期

生楽器を再現できるサンプラーが登場

それでも、

演奏間違いはアシスタントエンジニアが録音ボタンを絶妙なタイミングで

手動で叩いて消していました。


バブリーな頃は、立派な録音スタジオにクライアントがゾロゾロ見にくるので、

これでもか、というように総額数百万円になるようなシンセサイザーやサンプラーを

積み上げて…(使っていなくてもね。そんな時代)

シンセオペレーターとかマニュピレーターと呼ばれる専門家が

作曲家や編曲家が欲しい音色のイメージを伝えると、サササッと音を探し出して出したり、

シンセのつまみを操作して音を作ってくれました。

エンジニアの手動によるフェーダーの動かし方も素晴らしいものがありました。

予算に余裕があったので演奏家が演奏する音楽が多く、

作曲家が書いた譜面をプロのアレンジャーがアレンジして、

演奏のプロが弾くことで豊かな表現力が加わって、良い音楽の化学反応が起きていました。


音楽発注者の音楽に対する理解が豊富、人と人の能力の相乗効果を想像して期待

してくれました。


その後、徐々にコンピューターとミキサーのフェーダーが同期するようになって…

作曲家やアレンジャーは入力したデータとPCを録音スタジオに持ち込んで、

エンジニアはフェーダーの動きとエフェクターのつまみをPCに書き込んで

生楽器の音は演奏家の音からサンプリングされたコンピュータソフト音源になり、

高く積まれた重たい機械がスタジオの中から消え、

シンセオペレーター(マニュピレーター)という人たちがいなくなって…

弦楽器を演奏する人たちを見ることが少なくなりました。

作曲家がデータから譜面をプリントして持ってくるので

いつしか写譜屋さんという、スコア譜からパート譜を手書きする仕事もなくなりました。

でもインターネットのスピードがまだ遅いこともあって、デモテープはバイク便で送っていました。


録音された音楽は、リールのテープから、DAT、CDそしてオーディオファイルになって、

ハードディスク、メモリースティックに記録して渡すようになりました。

デモテープも自宅で本番に近い形で仕上げることも可能になりました。

しかし、最終的な音楽の仕上げはサウンドエンジニアがやっていました。


そして


音楽にかけられる予算がどんどん減って、

人と人の能力の相乗効果を想像できない発注者が増えて、

失敗ができない、お金がかけられないから

生身の人間の仕事が減らされて

PCでバージョン違いをたくさん作るようになりました。


その一方で

ネットのスピードアップ

PCの性能アップ

ソフト音源、プラグインのエフェクト機能アップ

機械類が高機能、価格は低く、昔と比べるとアマチュアでも

プロと同じ機材を次々に使えるようになった…


そんなところでコロナ禍。



スタジオに人が集まることがなくなり

作曲、アレンジ、エンジニアを1人でそこそこにこなせる人が出て来て、

全てを自宅で作業してしまい、かなりの価格破壊。

格安で、そこそこの音楽を作られることになりました。

そつなく聞こえるかも知れないけど、つまらない。


キーボーディスト、ギタリストが弾かなくても、コンピュータが演奏できる。

けれどそのデータを作るのはそこそこにデータをあやつる人。

エンジニアのアイデアで曲の仕上がりがまた変わってくるかも知れないのに

そこそこの知識だけのと少ない経験で仕上げることになる。


若い作家にしたら安くても生活のために引き受けて

体力もあるから徹夜して仕上げて

名前を売ることもできるけど、最高の出来は期待できない。


でも、

音楽という商品、

原材料がいくらで、コストがいくらで…とか言えないから、

一度値段を下げてしまったら上げる理由が大変。

今は良くても将来自分の首を絞めることになるんじゃないかなぁ。


自分1人で仕上げられるようになった時代だけど、

それはつまらない音楽しかできないと思う。

音楽のレベルが下がっているに等しいと思います。


株がバブルの頃を越えたなら、

才能が才能と出会える音楽が出来る環境がまた戻って来て欲しいな。



エンジニア歴40年の方がスタジオではなく家でミックスする状況。

都内の音楽スタジオも使う人が少ないと聞きました。実際に私の家の近所のレコーディングスタジオは土日にシャッターが閉まっていました。

昔なら考えられない状況です。


私は自分で書いた曲はもちろん自分がキーボード演奏できるけれど、

演奏家に弾いてもらったら、自分では思いもつかない世界が広がった…

という経験をしてから、無理に自分が全部やる必要はないと思っています。その方が自分の想像を超えた素晴らしいものができるとわかりました。

人とのコラボで広がる世界の良さを、今1人で自宅でシコシコ制作している

若い人にも知ってもらえる機会が必要だなぁと思うのでした。





今回もお読みくださりありがとうございました😊