ウクライナの徴兵拒否報じた「クロ現」の限界とは? | ワーカーズの直のブログ

ワーカーズの直のブログ

ブログの説明を入力します。

ウクライナの徴兵拒否報じた「クロ現」の限界

アリの一言 2024年02月22日 | 国家と戦争

 

   

 

 21日のNHK「クローズアップ現代」は、「侵攻から2年 ウクライナ最前線は今 徴兵拒否に揺らぐ社会」と題し、長引く戦争でウクライナに広がっている徴兵拒否・政府批判の実態を報じました。

 

 番組は、「兵士は奴隷ではない」というプラカードを掲げて抗議デモを行う兵士家族のもようから始まりました(写真左)。抗議デモはキーウ(キエフ)中央広場で連日のように見られるといいます。

 

 結婚間もなく夫が戦地へ赴いた妻は、「兵士は疲弊しきっています。復員と休暇の権利を獲得するため声をあげ続けます」と語ります。

 

 これらは徴兵を拒否しているわけではなく、その期間短縮と兵士の人権擁護を訴えるものです。

 

 一方、ロシアの軍事侵攻直後に妻の妊娠が分かったという男性は、「父親として家族と一緒にいたい」との一念で、「不法」に国境を超えて出国しました。

 

 徴兵拒否(逃れ)で当局に拘束されたウクライナ市民は2万人以上にのぼるといいます。

 

 徴兵拒否の市民を監禁し、強制的(暴力的)に戦場へ送っている実態を訴えたというSNSも紹介されました。

 

 16~60歳の男性が原則出国禁止されているウクライナでは、徴兵期間の短縮を求める声や徴兵拒否、「不法」出国、それに関わる汚職が広がっていることはこれまでも報じられてきましたが、それが広がり、政府による強権的動員が強まっている実態が、侵攻から2年を前に詳しく報じられた意味は小さくありません。勇気ある報道とさえ言えるでしょう。

 

 しかし、番組は後半で視点が一変しました。

 

 市民の声、実態を報じた前半とは打って変わって、後半はウクライナ政府・軍の高官や報道官のインタビューを中心に、「家族や国を守るためによく考えてほしい」(軍報道官)と徴兵拒否を抑える論調に焦点を当てました。

 

 極めつけは、コメンテーターとして防衛研究所幹事の兵頭慎治氏が登場したことです(写真右の右側)。

 兵頭氏は侵攻直後からNHK番組の常連で、一貫して「対ロシア・徹底抗戦」を煽ってきた人物です。防衛省防衛研究所の職員は自衛官の一員ですから、その「解説」が政府・防衛省・自衛隊の代弁であることは自明です。

 この日も兵頭氏は、「力による現状変更は許さないという原点に立ち返ることが重要」と反戦気分・運動が広がっていることにクギを刺しました。

 

 こうして前半の「広がる徴兵拒否」を打ち消す形で後半に「徹底抗戦」が強調されたのは、いかにもNHKという構成です。

 

 ところが、兵頭氏の発言を受けて最後にコメントした桑子真帆キャスター(写真右の左側)はこう言って番組を締めたのです。「苦しい時間が長くなると本音が表に出にくくなります。それを今後も報じていきたい」(大要)

 

 そこには、ウクライナ市民の実態・願いを取材し一日も早い停戦を願う現場スタッフと、ロシア敵視で徹底抗戦を煽る日本政府と一体となっているNHK上層部との軋轢・葛藤があるのではないか、と私には思えました。

 

 いずれにしても、国家の論理ではなく、市民の願い・立場に立って、1日も早い停戦への道を取材・報道することがメディアの使命であることは疑いの余地がありません。