【299】からのつづき
松本で大学生たちと3次会まで楽しんだ翌日は、独り淋しく酒蔵訪問。
約30年前の松本在住時代に381系の後継として木曽路の主役となった383系の指定席に収まり、紅葉の深まりつつある車窓を眺める。
2009年に供用が開始された南北自由通路は、幅10メートルと広く立派な割に人が少なく、拝島駅を思い出させる。
その通路の壁際に、これから向かう酒蔵の法被を着た男性がいらしたので、シャトルバスの乗り場を尋ね、教えてもらった通りに進むと、左手にこんなモニュメントが。

キン肉マンに出てくるタイルマンで、多治見市が日本有数のタイルの産地であることにちなんでいるそう。
発車10分前になり、トイレから戻ってきたらしいドライバーさんが乗り込んでドアが開く頃には、待ち客が私を含めて15人ほどに増えており、5分前には補助席まで埋まりドアが閉まって定時前に発車。
乗り場に酒蔵やバス会社のスタッフはおらず、12時05分発と信じてやってきた人は50分発の次発まで待つことになるのか、はたまた臨時便で救済されるのか。
そんなことはわれ関せず、といった感じで日本酒や酒蔵の話に興じる他の客たちの熱気を背中に感じながら、最前席から初めて訪れた多治見の街の風景を眺める。

マイクロバスの最前席というのは、運転手さんの助手席そのもので、座るのに勇気を要するが、2列目の1人席に腰を下ろして最前席と2列目の2人席しか空いていない状況で発車を待っていたところ、乳児を抱き幼児の手を引いた母親と、ベビーカーを持った父親が乗り込んで来て、母親と乳幼児が2人席に座ったあと、父親が最前席に座るのをためらっている。
マイクロバスは、最前列と2列目の間の床下にエンジンがあるため床面が盛り上がっており、ベビーカーを携えて最前席に収まることは難しい。
酒蔵開きに乳幼児を連れて行くことの是非はさておき、目の前に困っているパパさんがいるのだからと、「私が前に移りますよ」と告げてエンジン部分をまたぎ最前席に移ると、運転手さんも「ありがとうございます」と言ってくれる。





