【294】伊根町行き特急バス | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

【293】からのつづき


乗り込んだ車両は、窓下に背もたれが並ぶロングシート仕様で、アジア系らしき観光客であっという間に満席になったあとも、自転車やベビーカー、スーツケースなどを抱えた様々な客が次々乗り込んできて車内はすし詰め状態に。


西舞鶴9時44分発豊岡行きは1日1往復が運転される「丹鉄サイクルトレイン」に当たっているようで、自転車を載せやすいロングシート仕様車両に交換するため、先ほどの縦列停車が発生したのだと分かった。


3台の自転車と多様な国籍の観光客を乗せた丹鉄サイクルトレイン豊岡行きは、定刻より少し遅れて西舞鶴を発車し、私にとって初乗車となる京都丹後鉄道宮舞線に入っていく。


宮舞線どころか京都丹後鉄道に乗るのも初めてで、ゆっくり景色を楽しみたいところだが、私の席の左には白人女性3人組、右には中国語を話す親戚らしきグループが座っており、目の前には中年男性4人組がつり革につかまりながら韓国語を交わしていて、狭い密度の中に様々な人種や言語が入り乱れ、通路の向かいの窓いっぱいに広がっているはずの海の姿など見えそうにない。


そんな状況の中、由良川を渡るタイミングを見計らって首を左斜め後ろに捻り、背中側の窓から京都丹後鉄道を代表する車窓風景を眺める。

あまり首を捻り続けていると、ぴったりくっついて座っている隣の白人女性からあらぬ誤解を受けかねないので、顔を正面に戻し目をつぶる。

そんな忍耐の44分を過ごして天橋立に到着。
ここで8割方の客が降り、跨線橋を渡って行列している有人改札を抜けると、やはりインバウンド観光客で賑わっている。

次に乗る伊根町行き特急バスのポール前には6人が待っており、列に就くと私の後ろに観光客が20人ほど並ぶ。

10時50分の発車時刻が近づいてくると、案内の若い女性がグループごとに特急バスは対象のフリー乗車券類または現金のみ有効である旨を客に合わせて英語、中国語、日本語で説明している。

インバウンド対策で観光協会あたりが雇ったコンシェルジュかと思っていると、彼女の制服の襟には「PRU」(私鉄総連)の緑と赤のバッヂが付いており、丹後海陸交通社員であると知る。

発車時刻を5分ほど過ぎてやってきた特急バスは、路線バスなどでよく使われているエルガミオで、都会とは違って2人がけシートが多く並んでいる。

1000円札を運賃箱に投入して運転席後ろの1人がけシートに座り、次々乗り込んでくる客を見ていると、ほとんどが私と同じように紙幣で支払っている。


中型バスながらシートが多いため、無事に全員着席することができ、10分遅れで天橋立駅を発車。


丹後海陸交通のバス(丹海バス)に乗るのは初めてだが、この特急バスは京都府北部地域連合都市圏振興社(海の京都DMO)が、観光庁からオーバーツーリズム未然防止対策事業としての支援を受け、丹海バスへの委託という形で2025年10月1日~11月30日に実証実験的に運行している。


ちなみに、天橋立駅から路線バスで伊根町に行くこともでき、その場合は400円で所要時間1時間。特急バスでも43分かかるから、17分の短縮でプラス600円は高い気がしなくもないが、路線バスはエリアごとに200円の上限が設定されており、天橋立駅~伊根町間は2エリア分の上限額を合算した金額となっているので、距離に対する運賃が大きく抑えられている。


特急バスの運行目的はオーバーツーリズム対策だから、対象のフリー乗車券類を持った観光客の利用を誘導して地元客が利用する路線バスの混雑発生を抑制しつつ、現金払いの客からは上限額運賃を適用せずに支払いやすい1乗車1000円として運行経費に充当するスキームなのだろう。


バスは、京都府道2号宮津養父線から国道178号に入り、約20分で天橋立元伊勢籠神社に到着。


ここは、丹後国一宮の元伊勢籠神社や、天橋立を「股のぞき」で眺める傘松公園への最寄り停留所で、10人ほどが降り、その倍の客が乗ってきて立ち客が出る。


次は伊根湾めぐり・日出バス停まで20分停まらないので、右手に若狭湾を見ながら制限速度いっぱいで快走する。

車内に日本人は少ないが、私の脇に立っている女性3人組は福岡から来たらしく、元気な九州弁で博多周辺の話題で盛り上がっている。


バスは伊根町に入り、国道178号を離れ漁村の生活道路といった雰囲気の狭い道を進んで、遊覧船乗り場最寄りの伊根湾めぐり・日出で10人ほどが下車。


発車すると、いよいよ舟屋の並ぶエリアへと入ってゆき、天橋立駅から約50分で終点伊根町到着。

30年前から訪れたいと思っていた土地に、快晴のもと降り立つことができた幸運に感謝しながら空気を深く吸い込み、最初に訪れたいと考えていた場所を目指して歩き出した。
(つづく)