26日のふれあい広場のオープニングでは、日本で磁器が焼かれるようになった歴史に触れながら、約410年前の盃と小皿を紹介します。また、その原料であった伊万里産カオリンもお見せします。伊万里産カオリン(泉山)はかつて日本の磁器生産に欠かせない重要な素材でしたが、現在では、採掘場自体が保存の対象になって、使用されていません。
日本磁器の起源
日本で磁器が焼かれるようになったのは、豊臣秀吉の文禄・慶長の朝鮮出兵の際に、朝鮮から陶工が渡来したことがきっかけです。時代は17世紀初頭にさかのぼります。
磁器のルーツを辿ると、最初に磁器が誕生したのは7世紀の唐時代の中国です。その後、15世紀に朝鮮に伝わり、17世紀初頭になってようやく日本へと伝来しました。
日本磁器の国際的な発展
ちょうどその頃、中国では明王朝が衰退し、清王朝が台頭する激動の時代でした。この混乱により、中国からの磁器輸出が一時的に途絶えました。そこで東インド会社が日本の磁器に目をつけ、日本で生産された磁器が世界へと輸出されるようになります。
特に柿右衛門様式の磁器は、ヨーロッパの王侯貴族に愛され、高い評価を受けました。ドイツのマイセンは、この日本の磁器を模倣し、自国での生産を目指し、18世紀初頭に柿右衛門風の磁器を作り始めました。
伝統的な磁器の焼成
古い磁器は、天然の高価な輸入コバルトを用い、大きな登り窯で7~10日間かけて薪を焚き続けて焼成されます。釜入れから窯出しまで約2週間を要し、使用する薪の量は5トンにも及びます。薪は、赤松やナラ、樫が使われます。そのため、製造には多大な手間と費用がかかりました。こうして丁寧に焼かれた磁器は、染付の青が透明感のある美しさを持ち、長時間の焼成によって生まれる磁器の肌はしっとりとした質感を持っています。これは、現代の磁器にはない独特の味わいです。19世紀には登り窯から連房式の登り窯や石炭窯に移行し、焼成時間の短縮や効率化が進みました。
現代の焼物との違い
最近では、デパートで伝統工芸家の作品が高額で販売されているのを見て驚く人もいます。しかし、長い時間と卓越した感性と手作りの芸術性、貴重な材料費を考えると、その価値は決して高すぎるとは言えません。
一方、100円ショップなどで売られている安価な焼物には、安全性に懸念のあるものもあります。例えば、緑・黄色・赤などの色釉には鉛やカドミウムが含まれていることがあり、食品安全基準を満たしていない可能性があります。また、染付の青も天然のコバルトではなく、合成コバルトが使用されています。電気やガスで短期間で焼き、器も機械で成形され、絵柄も転写、どれも同じで個性がなく無機質です。
オープニングでお話しする時間は少しですが、日本の磁器の伝統とその価値を改めて知ることで、日常で使う器への見方も変わるかもしれません。