僕は呆然とその様子を見つめる。
2人は何か楽しそうに話をしていた。
彼女の隣に居る男性は
彼女のことをずっと見ていて
僕から見ても
さくらのことが
好きなんだと分かるようなものだった。
あぁ……
さくらは日本に戻って
素敵な人に出逢って
もう次に進んでたんだな…と痛感する。
僕だけが
あの時のまま
あの幸せな記憶の中に留まっていて
取り残されていたのだと知った。
僕は目の前を
絶え間なく過ぎ去る人混みの中
一息吐くと
ゆっくりと
彼女に背を向けて歩き始めた。
僕の暖かな春は
満開の桜並木の下で終わりを告げた。