お昼は予めマネージャーと予約した
ステーキ屋さんに行った。
ニューヨークで暮らしているだけあって
さすが英語ペラペラの彼女。
注文も全部してくれて
すっごいカッコ良かった。
でも複雑な気分にもなった。
彼女が思っていたよりも
遠い存在になってしまっていると………。
僕はステーキが来るまでの間
彼女の様子をチラッと見ながら
少しだけ緊張しつつも
今からのデートコースを予習していた。
しばらくして
ステーキが来ると
僕も彼女もテンションが上がった。
「美味しそう~」
彼女は目をキラキラさせていて
連れてきて良かったなと思った。
付き合ってた頃
僕に美味しいものを
食べさせてくれてた彼女に
今日は僕が
美味しいものをご馳走したいと
思っていたから
普通のを頼もうとしていた彼女を阻止して
少し高いステーキを頼んだ。
彼女は倹約家だから
自分で払うことを考えると
程々にしたいんだと思うけど
今日は彼女の時間を僕が買っている。
全部僕が払うから
僕にもう一度振り向いて………。
お金で買えない彼女の心を
手に入れたくて
カッコよく居ようと平生を装いながらも
内心は必死だった。
振り向いてくれるのなら……
全部安いもんだよ……。