「じゃ、またな」
「うん。送ってくれてありがと。
気を付けて…」
彼女とアパートの玄関で別れて
アパートの前で
彼女が部屋に入るのを確認すると
俺は寮に向かって歩き出した。
彼女は冷たいような感じもあるけど
決して短気なわけではなくて
照れ隠しだってことは
何となく分かってるし
俺はそこが可愛いなと思っていた。
こうやって帰り際にさりげなく
ありがとうって言ってくれたり
気をつけてって言ってくれたり
本当はすごく優しい子なんだと思う。
言葉だけじゃなくて
彼女のマッサージの手つきからしても
そうなんだろうなと
俺は思っていた。
確かに
彼女はちょっと変わってるかと聞かれれば
少しそういう所もあるのかもしれないと
答えると思うけど
変わり者の俺にとっては
最高のパートナーだ。
初恋が実ったからには
彼女を大切にしよう
俺はそう心に思いながら家路についた。
付き合った翌日も
彼女が気になって電話をした。
5回くらいコールをすると
「もしもし?」
彼女のクールで
少し掠れた感じの
心地よい声が聞こえた。
「おぅ、俺」
「仕事は?」
「さっき終わった」
「お前は?何してる?」
「大学の課題」
「うわ~ダルそう」
「まぁね」
友達のようで
恋人である彼女との電話の時間は
忙しい中でも気の休める
唯一穏やかな時間だった。
「あのさ…明日暇?」
「え?」