私は帰り道
改めて彼の優しさを思った。
かなり迷惑かけたのに許してくれて
意気地無しの私の為に
世話まで焼いてくれた。
優しい彼に
一言ありがとうと伝えたくて
私はドキドキしながらも
歩きながら彼に電話を掛けた。
忙しいかな………
何コールかして
やっぱ忙しいかなと
切ろうと思った所で
ゴソッと繋がったような音がした。
彼の咳払いが聞こえた。
「……もしもし?今仕事中…?」
「いや、寮だけど」
「電話大丈夫…?」
「おぅ」
私はゴクっと唾を飲んだ。
「今日……店長に話してくれたの?」
「おぅ。話しておいた。
俺から言った方が効果あるかなぁと思って」
「ありがとう。
ごめんね…面倒かけて……」
「面倒だと思ったらやんねぇよ」
照れ隠しみたいな彼の口調に
思わずふふっと笑ってしまった。
「何笑ってんだよ」
「ううん、別に…
お礼……何が良い?」
「デート」
悩むだろうと思ってたのに
本当に即答で
しかも''デート''という単語だったから
私は驚きのあまり
可愛いげない反応になってしまった。
「…は?」
「だからデートしろっつってんの」
「…………デートって何……」
私は訳が分からなくなっていて
なんだか頭の中がふわふわしていた。
「何って……知らねぇ……
お前はどっか行きたい所とかないのかよ」
「特には……」
「ま、い~や。
何するかは考えとく。
そのうち予定合わせてどっか付き合って」
思いがけない展開に
私は
「………分かった」
何故か了解してしまっていた。