それからしばらく彼に会うことはなくて
でも私は毎日のように
彼の言葉を思い返しては
ぼーっと物思いにふけっていた。
気のせいだったのかもしれない。
時間が経ったらそう思えてきていた。
そしたら久しぶりに
ユンギさんが
マッサージの予約を入れている事に気づく。
明後日か………。
結局その予約日は他の人の担当で
彼の担当にはならなかった。
ちょっとホッとしていたら
その代わりに
めんどくさいお客さんの担当に当たっていて
思わずため息をつく。
この人はず~~っと私を指名してきて
担当になる度に口説いてくる人。
もううんざりだったけど
お客さんだから仕方ない。
私は渋々
その人のハンドマッサージをした。
「君の綺麗な手にマッサージされるなんて
ホント俺幸せだよ」
あぁ………気持ち悪い…………
マッサージが終わって片付けていると
そのお客さんは私の手首を掴んでくる。
「今日バイト終わったらさ
俺とごはん行こうよ」
まただ………
「今日用事があって……」
「ちょっとだけだからさ」
私は早く逃げたくて
「先生呼んできます」
とそそくさと部屋を出た。
帰り際もそのお客さんに待ち伏せされて
通路の所で捕まってしまった。
通路の外れの薄暗いスペースに連れ込まれる。
「1回くらいいいじゃん。
僕、君みたいなクールビューティーな子
タイプなんだよね~」
「困ります……
他を当たってください……」
「ただのデートだよ?
何も変なことするつもりでもないしさ」
「や………でもあの……」
ホント最悪。
一回行ってしまった方が収まるのか……
どうしようと考えを巡らせていると
「すいません」
誰かに声を掛けられた。