「今日の昼……
ヒョンに会ったんでしょ?
なんで逃げたの?
どうして俺を避けるの?」
何も答えない彼女に対して
僕は聞きたいことが沢山あって
つい色々と聞いてしまった。
そしたら彼女が涙を流しているのが分かって
僕は動揺した。
彼女を泣かせに来たんじゃない。
どうしようと焦っていると
さっき彼女の隣で電話していて
席を外していた男が
戻ってきた。
「○○さん?どうした……?
君は…………テヒョンさん………だね……?」
見た目は英語がペラペラそうな
白人だったけど
流暢な韓国語を話してきて
驚いた。
「はい……。あなたは……?」
「あ、僕は○○さんの同僚だよ」
同僚………?
すると
泣いていた彼女が
「社長……」
と小さく呟いて
彼女が以前話をしていた
例の社長なのだと確信して
やっぱり彼女は
この男についてきたんだと知った。
「ごめんね。
今からアポがあるから
行かなくちゃいけないんだ。
もし用があったらココに」
そう言って
その男は名刺を渡して来た。
彼女はその男に背中を押されて
マンションを出ていく。
本当はそこで
追いかけなきゃいけなかったのかも
しれないけど
なんとなく
泣いている彼女をもう責められなくて
僕は名刺を見つめたまま立ち尽くしていた。