一方
仕事の方は
だいぶ顔も知られて
ニューヨークの居心地も良くなってきていた。
私の出した案は
沢山の人の協力を得て具体化していき
ニューヨークオフィスでは
主力の案になっていった。
そして
小さな失敗や反省を重ねて
ニューヨークでの考案が
ある程度出来上がった時点で
社長から一旦韓国へ戻ろうと言われた。
それは
私がニューヨークに拠点を移して
もうすぐで1年という頃だった。
ニューヨークを経つ前日。
社長に誘われてディナーへ行った。
「仕事の方は
本当によく頑張ってくれて
あとは韓国での美容のノウハウを
投入していく段階まで来た。
本当に良いものができそうで
僕はものすごくワクワクしてるよ」
社長は嬉しそうにそう話して
お酒を一口飲む。
「そろそろ君自身のことにも
頑張って欲しいかな、僕としては」
「………え」
私はステーキを切る手を思わず止めた。
「テヒョンくんがね
あれから頻繁に僕に連絡をくれたんだ。
君からは聞いてこないし
仕事が楽しそうだったから
僕からは何も言わなかったけど……」
私はパチパチとまばたきをした。
「何って連絡来てたか気にならない?」
社長にそう聞かれて
私は無意識に
「……気になります」
そう言っていた。
自分の無意識の言動に
ハッとした時にはもう
社長が話始めていた。
「彼ね、少なくとも月に1回は
僕に連絡をくれたよ。
僕との関係を聞いてきたり
僕のことも色々探ってきたけど
毎回毎回
''ヌナを返してください''
って……。
なんか心苦しくなってきてさ。
僕にも必要だから
今は返せないって断るのも……」
彼がそんなことを言っていたなんて
思いもしてなかったから
私はショックだった。
「彼、体調不良
まだ引きずってるんでしょ?
韓国戻ったら、お見舞いがてらに
少し話してみたらいいんじゃない?」
社長の話に私の心は揺らいだ。
なぜならネットに
またもやテヒョンくんの
心配になる記事が出ていたからだ。
『激痩せのVに心配の声相次ぐ』 と…。
何か思い詰めることがあったのだろうか………
心配だけど
でも
実際に会ったら
何を話したら良いのかも分からないし
第一、私が何か出来る訳でもない。
私は
「時間を掛けて考えてみます。
彼の事は確かに心配ですが
私は何も出来ないので…………」
そう答えるに留めた。
その日の夜
私はニューヨークの住まいを
少しだけ片付けて
韓国へ戻る準備をした。
そして翌日の日中の便で
韓国へ立った。