翌朝
  



玄関に荷物を運んで

ゆっくりコーヒーを飲んでいると

チャイムが鳴った。






一応警戒して覗き穴を見たけれど

そこにはスーツ姿の社長がいた。






ドアを開けると


「やあおはよう」


と笑顔を向けてくれる。






「おはようございます」



「顔もだいぶ晴れやかになったかな?
準備はOK?」



「大丈夫です」








私はマグカップを洗ったり
少し片付けをして

部屋を後にした。












そこからはバイト先の弁当屋を経由して
空港に向かった。

















そして乗り込んだ飛行機の中。






「そういえば○○さんは英語話せるの?」


「学生の頃勉強した程度なので……
あんまり……」


「そっか。
ま、僕がいるから大丈夫だけどね~」

  







飛行機での長旅の間

社長とは色んな話をした。







最初は
ニューヨークでのスケジュールに関してとか
仕事に関することだったけど


脱線に脱線を重ねて
Big Hitでの話とか
学生時代の話にまで及んだ。





でも社長は気遣ってくれたのか
テヒョンくんの話は持ち出さなかったので

落ち着いたフライトだった。

















15時間の空の旅の後

移動してニューヨークに着くと
現地は夕飯時だった。



海外に行ったことはあったけれど
時差の少ない国ばかりで
 

ニューヨークに来て
時差を初めて感じた。







お腹も空いてなかったので
ホテルに行って
早めに休むことにした。


















翌朝は緊張感から早くに目が覚めた。




その日は親会社の人と会うと聞いていたので


スーツケースから
綺麗めのワンピースを出して着替えた。










社長が迎えに来てくれると
一緒にニューヨークの街へ繰り出す。




全てが変わっているように目に映る
ニューヨークの町並みは
疲れた心を幾分か元気にしてくれた。









オフィスが立ち並ぶエリアの手前の街角に
大きなスクリーンがあって目を引いた。





すごいなぁと見上げていると
聞き覚えのある音楽が流れる。






BTSだった。








今彼らはアメリカでも注目されている。





その人気ぶりを
初日から現地で痛感しながらも



別れを決意した手前
映像から目を背けた。