「あれ、早っ!」
意外と早く食べ終えた彼に驚いていると
彼はニンマリと笑っている。
「あっちで休んでていいよ」
食器を受け取ってそう言うと彼は
「ここにいる~」
と言う。
「今日はもう終わりなの?
スケジュールは」
「また事務所行かなきゃいけない」
「今日?」
「うん……」
「そっか。
相変わらず忙しいね。
なんかアメリカの方のチケットの価値が
とんでもなく上がってるって聞いたよ?
すごいね~~」
「俺もビックリ。
でもだからと言って
何か俺たちが変えることはないけどね」
「そこがBTSのすごい所だよねぇ…」
普通はここまで有名になると
天狗になってしまって
偉そうにしたりして
変わってしまうものだけど
彼らの違う所は
有名になっても礼儀正しく
初心を忘れない所だ。
そういう所が
みんなに愛されるアイドル
そして尊敬されるアーティストになった
理由なんだろう。
「ありがとう。
でも俺は英語も苦手だしさ
正直、あっちの活動はしんどい所も
あるんだけどね…」
「そうだよねぇ……
ナムくんも喋れると言えど大変だよね~。
ま、ごはんとかそういうのを楽しみにね」
「そだね」
私は彼と楽しくお喋りをしながら
洗い物を終えた。
「ねぇヌナ。
ちょっと来てくれる?」
テヒョンくんにそう声を掛けられて
腕を引かれてリビングへ移動した。
「ここ座ってて」
ソファに座るように言われたので
大人しく座っていると
彼は何やらバッグの中を
ガサガサしている。
「あった!」
彼は小さい黒い袋を手に
私の元へやってきた。
すると
中から何やらシルバーの
キラキラしているものを取り出した。
そして
それを持ったまま
私にハグをしてくるから
ドキドキする。
彼が離れた時に
胸元にくすぐったさを感じて
ふと見ると
首に
シルバーのネックレスが掛けられていた。