ある日
事務所で仕事をしていて
移動でロビーを通りかかった時のこと。
ジョングクとジミンが
先にロビーに到達した際に
出待ちをしていた運の良いファンたちが
ワーッと
2人を追いかけて行くのが見えた。
僕は2人のだいぶ後ろを歩いていて
状況的にヤバイと判断して
少しゆっくり目に
様子を伺いながら歩いていた。
ロビーに到達すると
人はほとんどいなくなっていて
良かったと思って歩いていると
ベターッと派手に転んで
起き上がろうとしている人がいる。
きっとジョングクか
ジミンを追っかけてたけど
押されて潰されてしまったのだろう。
眼鏡もバッグも遠くに飛んでしまっていた。
誰も助けてくれる人がいないようで
可哀想だったので
僕は眼鏡を拾って
彼女の元へ近づいて行った。
起き上がったその人に
眼鏡を渡そうとすると
目に入ったのは
どこか儚げな
色白の美少女だった。
僕は一瞬見とれたけど
彼女が眼鏡を受け取ったのを見て
ハッとした。
「すみません……」
彼女が眼鏡をかけると驚くことに
あの2回も僕の目の前で転んだ
瓶底眼鏡の地味な女の子だった。
僕は絶句した。
眼鏡の下の素顔が
あんなに可愛かったなんて…………。
驚いている僕をさし置いて
彼女は落としたものを拾っていた。
僕はまたハッとして
一緒に落としたものを拾った。
彼女に拾ったものを渡す時
僕は彼女に声を掛けた。
「また転んだの?
僕の前で転ぶの3回目。笑
狙ってる?」
「…………」
彼女は僕を一瞬見た後も無言だった。
「大丈夫?
この前は怪我してたみたいだったけど……」
そう問いかけると
彼女はムクッと立ち上がった。
「大丈夫です。
色々とご迷惑おかけしました…。
以後気を付けます……」
そう小さな声で目も合わせずに言う彼女。
感情が全く読めなかった。
歩きかけた彼女を見て
僕も慌てて立ち上がると
「ねぇ」
と声を掛けた。