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スルース

イギリスの二大俳優による密室劇です。


マイケル・ケイン ジュード・ロウ 主演

ケネス・ブラナー 監督

2007年 アメリカ映画 「スルース」


ロンドン郊外にあるお屋敷。

そこに住む推理作家アンドリュー・ワイク(マイケル・ケイン)の元に

マイロ・ティンドル(ジュード・ロウ)がやってきます。

彼はワイクの妻の愛人で、用件はワイクに妻と離婚してくれというもの。

そこでワイクはティンドルに、

かつて妻に与えた宝石を盗み出すことを提案します。

上手くティンドルが宝石を盗み出せば、

ワイクには宝石に掛けた保険が転がり込み、

ティンドルには妻と宝石が手に入るというのです。

こうしてゲームは始まるのでした。


イギリスの至宝、ジュード・ロウの美しさが眩しすぎます。

密室で長い間彼と二人きりで過ごすマイケル・ケインに嫉妬さえ覚えます。

二人の間で行われるゲームは、主導権がクルクル変わります。

ゲームの勝敗も気になるところですが、

二人の駆け引きの色っぽさと言ったら!

この作品は1972年にマイロ・ティンドル役をマイケル・ケインが演じて

大変話題になったそうです。




ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

アメリカン・ドリームを手にした男の物語です。


ダニエル・デイ=ルイス ポール・ダノ

ディロン・フレイジャー キアラン・ハインズ

ケヴィン・J・オコナー 主演

ポール・トーマス・アンダーソン 監督

2007年 アメリカ映画

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」


鉱山労働者のプレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)は

石油採掘中に亡くなった同僚の息子(ディロン・フレイジャー)を

自分の息子ということにして、

彼をダシにアメリカ各地で石油を掘り起こす事業を始めます。

そこへ自分の住む街の地中には石油があるという青年(ポール・ダノ)が現れ、

プレインヴューは息子と共にその街へと向かいます。

土地代だけを支払い石油を我が物にしようとするプレインヴューですが…


フィクションではありますが、

アメリカが何故、こんなに屈強なのかがなんとなく解かる気がしました。

アメリカには今のところちっとも憧れませんが、

負の歴史に対峙できるアメリカのこれからに期待します。

それにしても、監督のポール・トーマス・アンダーソンです。

ブギー・ナイツといい、マグノリアといい、

彼の才能は留まることを知りませんね。

ヒトラーの贋札

第二次世界大戦中にドイツで起こった

史実に基づいたお話です。


カール・マルコヴィクス アウグスト・ディール

デーヴィト・シュトリーゾフ マリー・ボイマー

ドロレス・チャプリン 主演

ステファン・ルツォヴィッキー 監督

2006年 ドイツ・オーストリア映画

「ヒトラーの贋札」


第二次世界大戦中のドイツ。

ロシア系ユダヤ人、贋作師サリーは

紙幣やパスポートを偽造していた罪で逮捕されます。

収容所でドイツ人将校達の肖像画を描いて

生きながらえていた彼はある日突然、

ザクセンハウゼン収容所へ移送されます。

そこでイギリスポンド紙幣の偽造作戦、

「ベルンハルト作戦」へ従事することに。

偽造の目的はイギリス経済に打撃を与えることでした。

作戦を成功させなければ待っているのはガス室か銃殺。

サリーをはじめとする印刷技術者達は不本意ながらも

ナチス・ドイツの為に働かざるを得ないのでした。


まさに真実は小説よりも奇なり。

明日をも知れない命を1日でも長くさせるために

自分で自分の首を絞めていることを知りながら、

ナチスの為に働かなくてはならなかったユダヤ人技術者達。

今日まで語られていない史実も沢山存在するのでしょうね。

史実に基づきながらもドラマティックに仕上がった作品でした。

いのちの食べかた

ドイツ発のドキュメンタリー映画です。


ニコラウス・ゲイハルター 監督

ウォルフガング・ヴィーダーフォファー 編集

2005年 オーストリア・ドイツ映画

「いのちの食べかた」


工場で大量に飼育されたひよこ。

選別され順々に籠の中へと放り投げられます。

温室の中で大量に育てられたトマト。

赤く熟れた実は次々に刈り取られていきます。

豚は後ろ足からぶら下げられて、数々の工程を経て

小さな肉片になっていきます。

それらは携帯電話で電話をする片手間で

人の手によって片付けられていきます。


シュールでポップ!

映像のリアルさは生々しいはずなのに、

何故か無機質さを感じる程、圧倒されました。

対称的な構図は不自然さゆえに、美しいものでした。

ナレーションも音楽も無く、

ひよこのピヨピヨ鳴く声…というより、音、

豚を切り刻むチェーンソーの金属音は

破壊的でも破滅的でもなく、工業的でした。


ここに幸あり

ユルめフランス映画です。


セヴラン・ブランシェ ミシェル・ピコリ

ジャン・ドゥーシェ リリ・ラヴィーナ 主演

オタール・イオセリアーニ 監督

2006年 フランス映画

「ここに幸あり」


大臣のヴァンサン(セヴラン・ブランシェ)は

日々の業務を適当にこなすステレオタイプの役人。

ところがある日、失脚し、辞職するハメになります。

そんな彼に愛想をつかし、愛人は彼の元を去り、

住んでいた公邸も出て行かなければなりませんでした。

地位もお金も無くなった彼は母(ミシェル・ピコリ)におこづかいと

昔住んでいたアパートの鍵を貰います。

ところがそこには黒人達が不法占拠していて、部屋を空けてはくれません。

仕方なくアパートから出ると汚物が頭の上に降ってきます。

そこを通りかかった赤毛の女性(リリ・ラヴィーナ)が

ヴァンサンを助けてくれました。

こうして彼は色んな人たちにお世話になり、

ユルい生活が始まるのでした。


地位も名誉も無くなったけど、

その分自由になった時間でお友だちとお酒を飲んで

ユルく生きるもの人生、という作品でした。

仕事を失っても深刻にならずあっさりしている感じがよかったです。

私もこれくらいの余裕のある人になりたいものです。


実録・日本赤軍 あさま山荘への道程

1972年に起きた「あさま山荘事件」へ至る過程を描いた作品です。


坂井真紀 伴杏里

ARATA 地曳豪

並木愛枝 大西信満 

中和泉英雄 坂口拓

佐野史郎 奥貫薫 主演

原田芳雄 ナレーション

若松孝二 監督

2008年 日本映画

「実録・日本赤軍 あさま山荘への道程」


学生運動の激しい1960年代。

遠山美枝子(坂井真紀)は明治大学に通う女子大生。

同じ大学に通う重信房子(伴杏里)と親しくなり、

革命を信じて揃って後に日本赤軍へと変貌するブントへ入ります。

激化する安保闘争で多くの活動家が逮捕される中、

1971年、房子はテヘランへ渡り、美枝子は革命戦士になるべく、

軍事訓練へと参加します。

山岳での軍事訓練は革命左派リーダー永田洋子(並木愛枝)と

赤軍リーダー森恒夫(地曳豪)らの独裁体制の元、

共同訓練が行われます。

総勢29名の革命戦士達は総括の名の下に繰り返される集団リンチなど

その頃は知る由もありませんでした。


1970年代がこんなに壮絶な時代だったとは…

3時間10分の長編作品で、中だるみもあったものの、

衝撃作品でした。

そして、多少は脚色されているとはいえ、ノンフィクション作品。

事実は小説よりも奇なり。

改めて思いました。人間ほど怖いモノはいないですね…



ペルセポリス

イランが舞台のアニメーションです。


マルジャン・サラトピ 原作・脚本・監督

2007年 フランス映画

ペルセポリス


1978年、イラン。

9歳のマルジはパパ、ママ、おばあちゃんに囲まれて

ごく普通に暮らしていました。

そこへ革命が起き、戦争が勃発。

空襲や、厳しくなった風紀の取り締まりに

ブルース・リーやロックが大好きな活発な女の子マルジを心配した両親は

彼女をウィーンへと留学させることにします。

自由と恋愛を手に入れた彼女ですが、

西洋文化とイスラム文化の間で違和感を覚え、

両親の元へと帰ることにしたのでした。


アニメのイラストがポップでキュート!

思春期に誰でも持ついわゆる「中二病」的なものが、

女の子にもあって、尚且つ彼女の日常には

戦争やらイスラム文化が取り巻いている、

というシュールさがすごくよかったです。

観ながら、「痛い、痛いよ、マルジ…」という

いい意味でのトホホ感。

その傍らには戦争。

意外な組み合わせでした。








魔法にかけられて

アニメと実写の合体作品です。


エイミー・アダムス パトリック・デンプシー

ジェームズ・マースデン ティモシー・スポール

イディナ・メンゼル スーザン・サランドン 主演

ケヴィン・リマ 監督

2007年 アメリカ映画

「魔法にかけられて」


おとぎの国アンダレーシアに

森の動物たちと歌いながら暮らすジゼルは、

王子様と結婚することを夢みています。

上手い具合にエドワード王子(ティモシー・スポール)と出会い、

結婚することになった二人ですが、

王子の継母で魔女のナリッサ(スーザン・サランドン)に

結婚式を阻まれ、ニューヨークへ来てしまいます。

ここでは動物たちと会話も出来ないし、

人々は不親切・・・

そんな時、離婚弁護士ロバート(パトリック・デンプシー)と

彼の娘モーガン(レイチェル・コーベイ)に助けられます。

超・現実主義の彼らとおとぎの国のお姫様ジゼル。

そして彼女を追いかけてやってきたエドワード王子。

彼らの波乱万丈なニューヨークライフはどうなることやら…


実写とアニメと言えば…

ドイツ映画の「ラン・ローラ・ラン」や

タランティーノの「キルビル」がありますね。

さて、このミュージカル仕立てのこの作品。

ジゼルの浮世離れした感じもピッタリで、

大笑いしながら見ました。

ディズニー、予想外にハイセンスでした。


追記:メルヘンなのに大量にゴキブリが登場するシーンがあり、

私は失神寸前でした。奇声を発せずにはいられない、面白作品です。




4分間のピアニスト

ドイツ発の音楽映画です。


ハンナー・ヘルツシュプルング

モニカ・ブライブトロイ スヴェン・ピッピッヒ

ヤスミン・タバタバイ リッキー・ミューラー 主演

クリス・クラウス 監督

2006年 ドイツ映画

「4分間のピアニスト」


トラウデ・クリューガー(モニカ・ブライブトロイ)は

刑務所のピアノ教師。

刑務所内の教会でパイプオルガンを弾いたり、

受刑者にピアノを教えたりしています。

ある日、受刑者ジェニー(ハンナー・ヘルツシュプルング)の

比類なきピアノの才能があることを知ります。

音楽だけに人生を捧げるクリューガーは、

看守にまでも暴力をふるうジェニーに

ピアノを教えることにします。

コンテストにジェニーを出場させ、

彼女を優勝させたいクリューガー先生でした。


ジェニーを演ずるハンナー・ヘルツシュプルングの

凶暴さとピアノを弾く力強さが印象的でした。

ピアノ教師クリューガーの音楽に対するストイックさも良かったです。

全編で流れるクラシックの名曲と共にロックやジャズのテイストを

アレンジしたサウンドトラックも必聴です。









Uターン

この作品で、初めてクレア・デインズを見ました。

この時点でも既にディカプリオと共演した

「ロミオ・アンド・ジュリエット」で

かなり有名になってたんですけどね。


ショーン・ペン ジェニファー・ロペス

ニック・ノルティ ホアキン・フェニックス

クレア・デインズ 主演

オリバー・ストーン 監督

1998年 アメリカ映画

「Uターン」


ボビー(ショーン・ペン)はラスベガスへ向かう途中、

車の調子が悪くなり、小さな町へ立ち寄ります。

そこで、セクシーな人妻グレイス(ジェニファー・ロペス)と

彼女の暴力夫ジェイク(ニック・ノルティ)と知り合います。

ボビーはジェイクにグレイスを、

グレイスにはジェイクを、殺して欲しいと依頼されます。

さっさとラスベガスへ行かなければならないのに、

二人の依頼を両方とも引き受けたジェイクなのでした。


Uターン、のサイン標識とは、

よそ者は引き返せ!ということらしいです。

クレア・デインズは頭のちょっと弱い女の子の役で出ていて、

それがすごく良かったです。ちなみに

そんな彼女の恋人役がまた、頭の悪い男の子がハマっていた

ホアキン・フェニックスだったのですが。

下品な人妻役のジェニファー・ロペスもよかったです。

この数年後、彼女はルイ・ヴィトンのキャラクターに

何故かなってしまったりして、ヴィトンの敷居をぐっと下げたという

功績の持ち主です。流石。

ジャンルとしてはサスペンス映画になるのですが、

いい意味でいや~な感じを体感させてくれた作品でした。

やっぱりオリバー・ストーンの圧倒的な演出力ですね。