こんばんはぁ、門倉と申します。
昨日に続きまして、川端康成の小説の読書記録です。
本日紹介するのは『山の音』です。『山の音』もまた昨日紹介した『眠れる美女』のように老人の性というか恋愛がテーマとなっております。
あらすじ(ネタばれ注意)は、以下のとおりです。
主人公は尾形信吾という老人(年齢は61歳です)で、彼はあろうことか自分の息子の嫁である菊子さんを好きになってしまいます。
菊子さんは、尾形信吾が昔好きだった女性によく似ていたので、それがきっかけで愛情を抱くようになるのです。
別に不倫とかをするわけではなく、自分の気持ちの中でだけ妄想的な欲望が高まっていくといった感じです。
破廉恥なドリーム(夢)も見るようになります。
尾形信吾は、このような夢を見た自分を醜悪だと思うのですが、一方では「夢の中なら、好きなことをしたっていいんじゃない?だって夢なんだもーん」と肯定的にとらえる気持ちもあります。
周囲の人間が死んでいき、自分にも確実に死が近づいているという予感が、いやおうなく菊子さんへの欲望を高めていくのです。
タイトルの『山の音』は、第一章に出てくるエピソードからとられていて(尾形信吾は深夜、裏山で得体の知れない不気味な音を聞きます)、主人公の尾形信吾にとっては「死期の告知」を意味しています。
川端康成特有の鋭い感受性で、老人の若い女性に対する憧れが、このうえなくデリケートに描かれています。『眠れる美女』のような不気味な感じはありません。
- 山の音 (新潮文庫)/新潮社
- ¥580
- Amazon.co.jp
BRICs経済研究所 代表 門倉貴史