ゴイアニア~フォタレザ 2千キロの旅 第8話 | ブラジル発 セクシー&キュートな洋服屋の生活裏話 (格安ネットショップもオープン ダンスファッション サルサ ナイトクラブに!)

ゴイアニア~フォタレザ 2千キロの旅 第8話

お婆ちゃんの家で小1時間ほど過ごした後、近くに点在するというお義父さんの親族達を尋ねることになった。


最初に訪問したのはもともとはお爺さんが所有していた牧場を次いでそこに住んでいる家族達の家だった。前回書いた様にお爺さんにはたくさんの子供がいたから、お爺さんがなくなった後は牧場は兄弟達に分配されたということだった。


ちなみに、お義父さんは長男だったのだが貧乏な牧場生活が嫌で家を飛び出してゴイアニアに出て来たという経緯があったので、遺産分配の時には辞退したという事だった。というのも、分割された牧場に住む数軒の親族達を尋ねても、誰も豊かとはいえない暮らしぶりだったから、ゴイアニアで自力で学校を出て、取り敢えず測量技師として国の機関で仕事をしていた義父の暮らしは、彼らのそれに比べると断然ましだといえた。


わたしの知っている中では、彼らの生活は「牧場管理人」レベルのものだったのだ。ただ、生活するのに精一杯でムダなものは一切存在していなかった。お義父さんのように知らない土地に一人で出ていく勇気のある人がこの田舎町にどれくらいいるのかは分からなかったが、この町に生まれてこの生活しか知らない人達は、自分達の貧困は分かっていても、どうすることもできないんだろう。ただ、自分達の土地で生活するには十分とは思えない牛を飼育して売る。その繰り返しだ。間違っても余分な収入はないから牛を増やすこともできなければ、そんな夢も思い描かない。そうやって、ただ年を取っていくのではないかと思えた。


彼らには、突然やって来た、アメリカ帰りの親族と貧しくは見えない外国人が訪問して来てもどう対応していいのか分からない。自分達には夢のまた夢である自家用車でやってきた親族に、笑顔で迎え入れることができるほど悟りを開けるわけがない。ただ、子供達は元気だったのが救いだった。


その後、違う小さな町に住む親族宅をいくつか訪問した。


ある家族は、夫婦に娘3人という女性ばっかりの所帯で、「ゴイヤバ(グァバ)」を加工して販売していた。家の裏に行くと大きな鍋でグァバをぐつぐつと煮ている所だった。火種はもちろん薪である。ただでさえ暑いフォタレザの昼下がりに、大汗を掻いて顔を真っ赤にしながらグァバが焦げないようにずっと大鍋の横について鍋をかき混ぜる作業。いったい何時間そうやっているのだろうか。そして、その横では水分を飛ばして濃縮したいってみると「グァバ羊羹」の様な物をせっせと棒状に整えて砂糖をまぶしてカットしてビニールに巻くという作業を小学生くらいの女の子が二人でやっていた。毎日毎日同じ作業を繰り返しても、「ゴイヤバ」のお菓子はありふれていて、とてもいい値がつくものではないことは、ブラジルを訪問したばかりのわたしにでも分かっていた。そこでも、家族みんな戸惑いの表情だったが、瓶詰めのゴイヤバを数個購入すると笑顔でサヨナラを言ってくれたものだ。


唯一ましな生活をしている家族がいて、幼い頃にうちの人達と遊んだ記憶のある女性は大歓待でわたし達を家に招き入れた。生活レベルが上がるほどに人間には心の余裕が出て来るものだとしみじみと思った。


つづく