「生徒の会」と称する「宴会」 | 津上研太のブログ

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忠言耳に逆らえども行いに利あり

「生徒の会」と称する「宴会」がまたひらかれる。人によっては「発表会」「Student Live」など呼び方は色々だけれど、とにかく年一回の僕のサックスレッスンの生徒さんが一堂に会する日だ。

僕のレッスンはマンツーマン形式でやっている。その方がそれぞれに合ったレッスンができるからだ。
僕はそもそも人に何かを教えるなんて出来ないと思っていた。初めは半ば嫌々やっていた。だから、もちろん発表会なんて絶対にやりたくなかった。だってめんどくさいじゃん。

教室を始めて何年目かに生徒の一人のS氏が
「先生、発表会やりましょうよ。」と言ってきた。

「やだよ。やんないって決めてんだから。」
「やれば、生徒のみんなの横のつながりができますよ。」
「いいよ。やらない。」
「どうしてですか?」
「だってめんどうじゃん」
「なにがですか?」
「ほら、生徒のリスト作ったり、ミュージシャンを頼んだり、会場を押さえたりさ。おれ、そういう事務手続き苦手なんだよ。」
「そんな理由ですか?本当にそれだけの理由ですか?」
「うん。」
「じゃあ、その辺は私がやります。先生は当日来てもらうだけでいいですから」

半ば強引に押し切られた。

「じゃあ、一回だけね。」
「はい!とりあえず一回やりましょう。」

ところが、ふたを開けてみると、ただ行くということだけではすまなかった。

マンツーマンでやっているのでみんなは僕を知っているけれど、生徒同士はほぼ初対面だ。一種異様な空気が漂っている。どうせなら楽しんでもらいたいからいろんな席に顔を出して「どう?楽しんでる?どうよ。楽しい?」と聞き回っていた。
(今となってはもう回数を重ねているのでそんな気苦労はなくなったけどね)

それに生徒と共演してくれるミュージシャンには本当に頭が下がる。とにかく生徒はみんな(どちらかといえば)下手なわけで、SAXのようにフロントが下手(どちらかというと)だとサイドマンはくたびれるものなのだ。
それを約20名分付き合わなくてはならない。しかも本当に雀の涙のギャラで。(再び頭が下がります)
20人が一人10分演奏したらそれだけで200分だ。つまり3時間20分休みなく下手くそ(どちらかというと)なSAXに付き合わなくてはならない。
僕だったら、(空が割れて落ちてこようとも)絶対にそんなオファーは受けない。


生徒にとっては本物のミュージシャンと共演できるチャンスだし、人前で演奏する独特の緊張感を味わうことができる。いわゆる「発表会」だと練習したことをやるだけになってしまいがちだが、ここではミュージシャンと一緒に「共演」するわけだからハプニングも起こる。それがまた良い経験になる。

年に一度の音楽の「場」である。

生徒さんと一口に言ってもいろんな人がいるわけで、(この会ではなにをやっても良いといってある)中には自慢の手品を披露する人や、SAXではなくギターを弾く人、歌う人、はたまた生徒の奥様が歌ったり、チェロを弾いたり、友達を連れてきてその人が歌ったりドラムを叩いたり・・・。まぁ何でもありな会だ。(今年はどうやらサンボーンのコスプレまで登場するらしい)

当初は一回きりと思っていたが(もちろん一回やっちゃうともう止まらない。)なんだかんだで今年で第五回目だ。



このブログをやれやれと進めてくれたO氏とU氏は特に気合いが入っている。このお二方は口だけは達者で(良い意味でですよ)とにかく全てをポジティブに考える。おまけに負けず嫌いだ。(前出のサンボーンのコスプレはこのO氏だ)
頭の中のイメージでは自分たちは一流のミュージシャンで、すぐにでも一流ライブハウス(ブルーノートのような)からオファーが来ると思っている。(思っているなんてもんじゃない。信じ込んでいるようだ)もちろんSAXは上達してきてはいるのだが、ずぶの初心者から始めて数年で彼らの思い描く一流ミュージシャンと肩を並べられるほど上達するわけがない。
しかしながらかれらにとってもこの「会」は紛れもなく音楽の「場」なのである。
とにかく、この「会」を楽しみにしていて、(楽しみを通り越して生き甲斐のようだ)それにむけて一年前---つまり前回の「会」が終わった直後から準備してきたといっても過言ではない。あまりに気合いが入りすぎていらっしゃるので、どうか空回りしないでと願うばかりだ。


毎年感心するのは(O氏とU氏ももちろんだが)ちゃんとみんな上達してきているということだ。歩みは遅いかもしれないが確実に一歩一歩進んでいるのを感じる。そういう姿を見るにつけ、「あー、やってて良かったなぁ」と思うわけだ。

さー。今回はなにが飛び出すのかなー。あんなにやりたくなかったのにいつの間にか楽しみになっている自分がいる。きっかけをくれた幹事長のS氏に感謝しなくちゃな。