米国でも話題に!

モンスターがTwitter上でカシメロとの対戦について言及

 

先日のWBO世界バンタム級タイトルマッチにて、見事ゾラニ・テテを3回TKOに葬り新王者に輝いたジョンリル・カシメロ。試合後のインタビューではWBA, IBF同級王者井上尚弥への“挑戦”に名乗りを上げた。

 

 

「井上を連れてこい。かかってこいモンスター!」

 

不利と言われていたテテとの対戦に完勝したカシメロはモンスターとの対戦にも強気のコメント。カシメロ陣営も「井上尚弥の“弱点”に気づいた」と発言しており、カシメロが所属するプローモーション会社の経営者であるマニー・パッキャオが井上との試合を後押しているとの噂も立っている。

 

 

カシメロの挑戦表明に対し井上も、対戦に興味を匂わせる発言をTwitter上に投稿。

 

 

この発言がきっかけとなり、ボクシングの本場アメリカでも二人の対戦についての話題がとても盛り上がっている。

 

そこで仮にカシメロと井上の対戦が実現した場合の試合予想を簡単にしてみようと思う。

 

 

毎度のことながら“鍵”となるのは井上の“ジャブ”

 

いきなり“結論”になってしまうようだが、筆者としては“井上の圧勝”を予想する。

 

正直なところ元王者ゾラニ・テテの方が井上にとってやり辛い相手であったのではないだろうか。

 

 

日本のメディアでは“井上尚弥の弱点”について報道されることはとても少ないように思える。しかし、海外のメディアやボクシングファンの中で頻繁に弱点として指摘されているのが“ジャブを打つ時のステップ”とその際の“ガードの甘さ”である。

 

 

言わずもがな、井上尚弥が魅せるボクシングの完成度は非常に高い。過去の日本人ボクサーたちと比べても“日本ボクシング史上最強のボクサー”と言って間違いないだろう。特に“踏み込みのスピード”と、“安定した足腰の強さから体重をパンチに乗せる能力”においては世界のボクサーたちと比べても稀有なレベルにあると考える。

 

 

しかしそのストロングポイントが仇となるケースがある。ノニト・ドネア戦で第9ラウンドにもらった強烈な右のカウンターがまさにそれである。第4ラウンドの残り20秒過ぎにも同じようなタイミングで右のカウンターを合わせられている。

 

どちらも井上の“ジャブ”に合わせられているパンチだ。

 

 

井上と対戦経験のある選手が口を揃えて“彼のジャブ”をこう表現する

 

 

「井上のジャブは右ストレート並みの威力がある」

 

 

この“超攻撃型のジャブ”に並大抵のボクサーは萎縮し、ガードを固め丸腰になる。そうなってしまえばあとは井上のやりたい放題である。腰が丸まりパンチを返してくる怖さのない相手に対し、高速ステップインで懐に潜り込み得意の左ボディ。あるいはムキになり体勢を崩しながら打ち合いにくる相手へ強烈な左フックのカウンター。

 

井上はほとんどの試合をこのパターンで終わらせている。とにかく“あのジャブ”に怖がった時点で井上尚弥に勝つことはほぼ不可能と言っていい。

 

 

ではこの強烈なジャブに“弱点”が潜んでいるとはどういうことか?

 

 

異常なまでに威力の高いジャブのカラクリは“強力な踏み込み”にある。どれだけパンチを強振してもほとんど身体のバランスを崩すことのない井上の“強靭な足腰”が生み出す“ステップイン”。このステップインによりジャブに体重が乗り右ストレート並みの威力を生み出すのだ。

 

 

しかし、逆を返していえば“ステップイン”に依存をしなければ“あの威力”を生み出すことは難しい。そして“相手に向かってステップを踏む”ということは重心が前方に流れるため、“相手のパンチを避ける体勢を作り辛くなる”ということだ。

 

 

ステップを踏み込む分、パンチを打ち込む際のモーションが大きくなり、相手にタイミングを読まれやすいという欠点も生まれてくる。さらには、遠い間合いからでも威力の高いジャブを打ちこむ“大きなステップ”の代償として、左腕が伸びきった時に“顎が上がり”、相手の右パンチに対して“隙”を与えてしまう。

 

 

とはいえだ、

 

 

井上の場合バックステップのスピードもめっぽう速く、相手のパンチを見切る目も良いため、あのジャブに“萎縮せず打ち返す気概”を持ったとしても、スピードに対抗することが出来なけれなパンチを当てることは難しい。

 

 

井上に対抗するには“あのジャブに怖がらず、スピード負けしない、そして効かせることのできる威力がこもった右カウンターを打てるか”が鍵になる。

 

 

過去の対戦相手に“2人”、その攻略の片鱗を垣間見せた選手がいた。

 

エマニュエル・ロドリゲスと、上述したノニト・ドネアである。

 

特にロドリゲスの場合、第1ラウンド、井上の“一発目”のジャブにカウンターを合わせてくるという“神業”を見せている。しかし一発のパンチ力に乏しいロドリゲスのパンチでは井上を止めるには至らなかった。

 

 

このロドリゲス並みの“カウンター技術”、そしてドネア並みの“パンチ力”“井上のパンチに臆さない精神力と打たれ強さ”、さらには井上の驚異的なフィジカルに負けない“体格”“スピード”、これらの要素を併せ持つ選手であれば、“無敵にも見える日本の怪物”に勝機を見出せるだろう。

 

そして現状のバンタム級を見渡した時、

 

 

『そんな選手はいない』のである笑

 

 

唯一挙げられるとすれば、“コンディションを完璧に仕上げてくること”を前提としたギレルモ・リゴンドーくらいだろうが、直近のフリオ・セハとの試合を見る限りでは、かなり厳しいように思えてしまう。

 

 

テテの方がカシメロよりも井上にとって“やり辛い相手”であると上記したが、根拠として、テテには身長、リーチ共に井上よりも上回る“フィジカル的優位性”“かなり高い水準のカウンター技術”を持つといった点が挙げられる。

 

 

しかし“スピード”あるいは“打たれ強さ”において、井上のパンチを捌ききれるとは思えないため、仮にテテとの試合が実現しても中盤以降に井上が倒しきる可能性が高いだろう。

 

 

カシメロに至っては、身長、リーチ共に井上よりも劣る上、カウンターの上手い選手とは言えない。“踏み込みの速さ”と“体幹の強さ”は光るものを持っているが、井上と比べてしまうと同じレベルにあるとは言えないだろう。恐らく井上にとって最もやり易いタイプの1人ではないだろうか。

 

 

ジャブの差し合いで圧倒されたカシメロが、左のボディで倒される、あるいは低いガードの隙間に左フックをねじ込まれ試合終了といった場面が容易に想像できてしまう。いつも通りに井上が戦えれば脅威と言える相手ではないだろう。

 

 

ドネアとの死闘を乗り越え、さらなる成長を見せるであろうモンスターの“苦戦”は階級を上げるまではまだまだ見られそうにない。